腎アウトカムに対するSGLT2阻害薬の効果に対する糖尿病の影響



PubMed URL:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36351458/ 

タイトル:Impact of diabetes on the effects of sodium glucose co-transporter-2 inhibitors on kidney outcomes: collaborative meta-analysis of large placebo-controlled trials

<概要(意訳)>

背景:

SGLT2阻害薬は、心不全、慢性腎臓病、アテローム性動脈硬化性心血管疾患のリスクが高い2型糖尿病患者において、腎臓および心血管の有害事象のリスクを低減することが大規模臨床試験により明らかになっている。

これらの糖尿病の有無を含めた試験では、糖尿病の無い患者のアウトカムを個別に評価するようにデザインされていない。

 

方法:

SGLT2阻害薬の試験を系統的にレビューし、メタ解析を行った。

MEDLINEおよびEmbaseデータベースの開設から2022年9月5日までに発表された臨床試験を検索した。

対象とした試験は、二重盲検、プラセボ対照、成人(18歳以上)、大規模(1群500例以上)、期間6ヶ月以上を条件とした。

 

分析に使用される要約レベルのデータは、公開されたレポートから抽出されるか、治験責任医師によって提供され、治療効果を推定するために逆分散加重法(メタ解析の標準的なアプローチ)によりメタ解析した。 

 

主な有効性アウトカムは、「腎疾患の進行(無作為化時点からのeGFRの持続的50%以上の減少、持続的なeGFRの低下、末期腎疾患、腎不全による死亡)」、「急性腎障害」、「心血管死または心不全による入院の複合」であった。

その他のアウトカムは、「心血管死または心不全による入院、心血管死、非心血管死、全死亡」を別々に検討した。

主な安全性アウトカムは、「ケトアシドーシスと下肢切断」であった。

本研究は、PROSPERO、CRD42022351618 に登録されている。

 

結果:

文献検索により、15件の大規模試験が特定された。

2 件の大規模試験である1型糖尿病患者1,402例を対象とした試験 (inTandem3試験) 、COVID-19で入院した1,250例を対象とした試験 (DARE-19試験) は、6ヶ月未満の追跡期間であった為、メタ解析から除外された。

残り13件の試験結果には、無作為に割り当てられた合計90,413例の患者が含まれていた。

32,238例(35.7%) は女性で、平均年齢の範囲は61.9~71.8歳であった。

13件の大規模試験は、バイアスリスクが全て低いと判断された。

 

4件の試験には、アテローム性動脈硬化性心血管疾患のリスクが高い2型糖尿病患者42,568例が含まれていた。

5件の試験には、心不全患者21,947例(糖尿病が11,305例、非糖尿病が10,638例、糖尿病状態不明が4例)が含まれていた。

4件の試験には、慢性腎臓病患者25,898例(糖尿病が20,931例、非糖尿病が4,967例)が含まれていた。

糖尿病状態が不明な4例は、分析から除外し、最終分析における母集団患者は、90,409例になった。

糖尿病患者の99%以上は、2型糖尿病患者であった。

 

ベースラインの平均eGFRの範囲は、アテローム性動脈硬化性心血管疾患のリスクが高い2型糖尿病患者で74-85 mL/min/1.73m、心不全患者で51-66 mL/min/1.73m、慢性腎臓病患者で37-56 mL/min/1.73mであった。

追跡期間の中央値は、アテローム性動脈硬化性心血管疾患のリスクが高い2型糖尿病患者で2.4~4.2年、心不全患者で0.8~2.2年、慢性腎臓病患者で1.3~2.6年であった。

 

分析対象となった13試験において、

プラセボと比較したSGLT2阻害薬の「腎疾患の進行[無作為化時点からのeGFRの持続的50%以上の減少、持続的なeGFRの低下、末期腎疾患、腎不全による死亡]」の相対リスクは、37%[RR 0.63(95%CI 0.58-0.69)]の減少が示された。

また、糖尿病状態別の相対リスクは、糖尿病患者で38%減少[RR 0.62(95%CI 0.56-0.68)]、非糖尿病患者で31%減少[RR 0.69(95%CI 0.57-0.82)]となり、全体と糖尿病の有無で、不均一性は認められず(p=0.31)、一貫したリスク低下が示された。

 

プラセボと比較したSGLT2阻害薬の「急性腎障害」の相対リスクは、23%[RR 0.77(95%CI 0.70-0.84)]の減少が示された。

また、糖尿病状態別の相対リスクは、糖尿病患者で21%減少[RR 0.79(95%CI 0.72-0.88)]、非糖尿病患者で34%減少[RR 0.66(95%CI 0.54-0.81)]となり、全体と糖尿病の有無で不均一性は認められず(p=0.12)、一貫したリスク低下が示された。

Lancet. 2022 Nov 19;400(10365):1788-1801.

慢性腎臓病患者を対象にした4試験(CREDENCE試験、SCORED試験、DAPA-CKD試験、EMPA-KIDNY試験)において、各腎疾患の相対リスクは、それぞれ、

プラセボと比較したSGLT2阻害薬の「糖尿病性腎症または腎症」の相対リスクは、40%[RR 0.60(95%CI 0.53-0.69)]の減少、

プラセボと比較したSGLT2阻害薬の「虚血性腎症または高血圧性腎症」の相対リスクは、30%[RR 0.70(95%CI 0.50-1.00)]の減少、

プラセボと比較したSGLT2阻害薬の「糸球体疾患」の相対リスクは、40%[RR 0.60(95%CI 0.46-0.78)]の減少、

プラセボと比較したSGLT2阻害薬の「その他または不明の腎疾患」の相対リスクは、26%[RR 0.74(95%CI 0.51-1.08)]の減少、

プラセボと比較したSGLT2阻害薬の「診断された全ての腎疾患」の相対リスクは、48%[RR 0.26(95%CI 0.56-0.69)]の減少、

となり、診断された各腎疾患で不均一性は認められず(p=0.67)、一貫したリスク低下が示された。

Lancet. 2022 Nov 19;400(10365):1788-1801.

分析対象となった13試験において、

プラセボと比較したSGLT2阻害薬の「心血管死または心不全による入院」の相対リスクは、

全体患者で23%[RR 0.77(95%CI 0.74-0.81)]の減少

糖尿病患者で23%[RR 0.77(95%CI 0.73-0.81)]の減少

非糖尿病患者で21%[RR 0.79(95%CI 0.72-0.87)]の減少

となり、全体と糖尿病の有無で不均一性は認められず(p=0.67)、一貫したリスク低下が示された。

 

プラセボと比較したSGLT2阻害薬の「心血管死」の相対リスクは、

全体患者で14%[RR 0.86(95%CI 0.81-0.92)]の減少

糖尿病患者で14%[RR 0.86(95%CI 0.80-0.92)]の減少

非糖尿病患者で12%[RR 0.88(95%CI 0.78-1.01)]の減少

となり、全体と糖尿病の有無で不均一性は認められず(p=0.18)、一貫したリスク低下が示された。

 

プラセボと比較したSGLT2阻害薬の「非心血管死」の相対リスクは、

全体患者で6%[RR 0.94(95%CI 0.88-1.02)]の減少

糖尿病患者で7%[RR 0.93(95%CI 0.85-1.01)]の減少

非糖尿病患者で0%[RR 1.00(95%CI 0.85-1.17)]の減少

となり、全体と糖尿病の有無で不均一性は認められず(p=0.43)、一貫したリスク低下が示された。また、有意なリスク低下は示されなかった。

 

プラセボと比較したSGLT2阻害薬の「全死亡」の相対リスクは、

全体患者で11%[RR 0.89(95%CI 0.85-0.94)]の減少

糖尿病患者で12%[RR 0.88(95%CI 0.84-0.93)]の減少

非糖尿病患者で7%[RR 0.93(95%CI 0.84-1.03)]の減少

となり、全体と糖尿病の有無で不均一性は認められず(p=0.36)、一貫したリスク低下が示された。

Lancet. 2022 Nov 19;400(10365):1788-1801.

分析対象となった13試験において、

プラセボと比較したSGLT2阻害薬の「ケトアシドーシス」の相対リスクは、

糖尿病患者で212%[RR 2.12(95%CI 1.49-3.8104)]の増加となったが、

非糖尿病患者では、約30,000例/年の追跡期間中で1例のみの発生であった。

 

プラセボと比較したSGLT2阻害薬の「下肢切断」の相対リスクは、

全体患者で115%[RR 1.15(95%CI 1.02-1.30)]の増加

下肢切断リスクがプラセボの約2倍を示したCANVAS試験を除く全体患者で

106%[RR 1.06(95%CI 0.93-1.21)]の増加

糖尿病患者で115%[RR 1.15(95%CI 1.02-1.03)]の増加

非糖尿病患者で2%[RR 0.98(95%CI 0.43-2.25)]の減少

となり、全体と糖尿病の有無で不均一性は認められず(p=0.71)、一貫したリスク低下が示された。

Lancet. 2022 Nov 19;400(10365):1788-1801.

結論:

SGLT2阻害薬は心血管系の有効性が確立されていることに加え、心血管リスクが高い2型糖尿病患者だけでなく、糖尿病の状態、原発性腎疾患、腎機能に関わらず、慢性腎臓病患者または心不全患者においても、腎疾患の進行や急性腎障害のリスクを軽減する為に使用するベネフィットが示された。

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