2型糖尿病合併CKD患者におけるSGLT2阻害薬の位置づけ(ADA&KDIGO 2022)



PubMed URL:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36189689/ 

タイトル:Diabetes Management in Chronic Kidney Disease: A Consensus Report by the American Diabetes Association (ADA) and Kidney Disease: Improving Global Outcomes (KDIGO)

<概要(意訳)>

SGLT2阻害薬は、HbA1cまたは血糖降下薬の追加の必要性に関わらず、eGFR≥20 mL/min/1.73 m2の2型糖尿病合併CKD患者の大半に推奨される。

これは、SGLT2阻害薬が2型糖尿病合併CKD患者のCKD進行、心不全、ASCVD(アテローム性動脈硬化心血管疾患)のリスクを軽減する強力なエビデンスに基づいている。

 

これらのベネフィットは血糖値とは無関係であり、2 型糖尿病合併CKD 患者は血糖管理目標が達成されていてもSGLT2阻害薬を使用する必要がある。

 

通常、SGLT2阻害薬はライフスタイルの改善とメトホルミンに追加されるが、eGFRが低くメトホルミンを安全に処方できない患者、忍容性がない患者、血糖管理目標の達成にメトホルミンを必要としない患者には、メトホルミンを使用せずSGLT2阻害薬を使用することは合理的かもしれない。

 

これまでに、カナグリフロジンとダパグリフロジンにおける腎疾患の転帰に関する2つの臨床試験[CREDENCE試験(ACR≥300 mg/g、eGFR>30 mL/min/1.73 m2)およびDAPA-CKD試験(ACR≥200 mg/g、eGFR>20 mL/min/1.73 m2)]では、eGFRの低下、腎不全、死亡率のエンドポイントを含む複合結果に対する有益性が実証された。

 

これらのエビデンスによって、SGLT2阻害薬の使用が推奨されるeGFRの下限値は時間の経過とともに変化した。

KDIGO 2022 ガイドラインでは、eGFR ≥20 mL/min/1.73 m2 (2020 ガイドラインではeGFR≥30 mL/min/1.73 m2で推奨していた) の2型糖尿病合併CKD 患者に対する SGLT2阻害薬の使用が推奨された。

また、ADAでは、eGFRの下限値を20 mL/min/1.73 m2以上に更新した (2022年最初の発表では20 mL/min/1.73 m2以上であった)。

 

これらの変更は、DAPA-CKD試験と慢性心不全患者を対象としたエンパグリフロジンのEMPEROR試験(eGFR 20以上を対象)を含む新しい大規模臨床試験の結果に大きく左右される。

また、CREDENCE試験(eGFR 30以上を対象)およびDAPA-CKD 試験(eGFR 25以上を対象)におけるサブ解析(eGFR30未満を対象)から追加のサポートデータが入手可能である。

 

これらの結果に基づくと、eGFR 20~29 mL/min/1.73 m2の2型糖尿病患者に対する SGLT2阻害薬の使用を支持するエビデンスは、アルブミン尿または心不全を併発している患者で最も強力であるが、SGLT2阻害薬の有効性と安全性は、これらの条件に関わらず、試験参加者の間で一般的に一貫している。

更に、SGLT2阻害薬は、eGFRに関わらず、一貫した有効性と安全性が観察されている為、

eGFR ≥20 mL/min/1.73 m2の2型糖尿病合併CKD患者にSGLT2阻害薬を使用できる。

 

今後は、エンパグリフロジンのEMPA-KIDNEY試験[eGFR ≥20 mL/min/1.73 m2、2型糖尿病とアルブミン尿の有無を含めた6,600例を超えるCKD患者が対象]から更なるデータが発表されることが予想される。

EMPA-KIDNEY試験は、CREDENCE試験やDAPA-CKD試験と同様に、明確な有効性が確認された為、試験は早期に有効中止となった。

 

これらの知見に基づいて、CKDにおけるSGLT2阻害薬の使用に関する適応症の拡大が更にサポートされる可能性がある。

SGLT2阻害薬の開始はeGFRの可逆的な低下と関連するが、通常は、薬物の中止は必要としない。

実際に、SGLT2阻害薬の使用は、AKI(急性腎障害)の保護効果を有するように思われる。

特に、CREDENCE試験とDAPA-CKD試験のプロトコルは、eGFRが開始閾値を下回った場合でも治験薬の継続を指定していた。

したがって、患者が治療に耐えられないか、KRT(腎代替療法)が開始されない限り、eGFR が開始閾値を下回った場合でも治療を継続することは合理的である。

Diabetes Care. 2022 Dec 1;45(12):3075-3090.

【メトホルミンにおけるADA 2022 Standards of Medical Care in Diabetesの記載】

・ファーストライン治療は、患者の併存疾患、患者中心の治療的要因、管理の必要性に応じて異なるが、一般的には、メトホルミンと包括的なライフスタイルの改善が含まれる (エビデンスレベルA)。

 

【メトホルミンにおけるKDIGO 2022 Guideline for Diabetes Management in Chronic Kidney Diseaseの記載】

・eGFR ≥30 mL/min/1.73 m2の2型糖尿病合併CKD患者には、メトホルミンの使用を推奨する(推奨レベル1B)。

・eGFR<45 mL/min/1.73 m2の場合、および一部の患者においてはeGFRが45 ~59 mL/min/1.73 m2の場合は、メトホルミンの用量を調整する。

 

 

【SGLT2阻害薬におけるADA 2022 Standards of Medical Care in Diabetesの記載】

・ベースラインのHbA1c、個別のHbA1c 目標値、メトホルミン使用の有無に関わらず、臓器保護の為にSGLT2阻害薬の使用を検討する。

 

・ASCVD(アテローム性動脈硬化心血管疾患)または腎疾患を併発している2 型糖尿病患者では、包括的な心血管リスクの低減および/または血糖降下薬として、心血管疾患に対するベネフィットが実証されているSGLT2阻害薬またはGLP-1受容体作動薬が推奨される(10.42:エビデンスレベルA)。

 

・2型糖尿病に確立されたASCVD、複数の ASCVD危険因子、または糖尿病性腎症を併発する患者では、MACEおよび/または心不全による入院のリスクを軽減するために、心血管系のベネフィットが実証されているSGLT2阻害薬が推奨される(10.42a:エビデンスレベルA)。

 

・2型糖尿病に糖尿病性腎症を併発した患者の場合、CKDの進行および心血管イベントを軽減するために、eGFR ≥20 mL/min/1.73 m2および尿中アルブミン≥200 mg/g クレアチニンの患者に対するSGLT2阻害薬の使用が推奨される(11.3a:エビデンスレベルA)。

 

・2型糖尿病に糖尿病性腎症を併発した患者には、eGFR ≥20 mL/min/1.73 m2および尿中アルブミンが正常から200 mg/g クレアチニンの範囲にある患者のCKDの進行および心血管イベントを軽減するために、SGLT2阻害薬の使用が推奨される(11.3b:エビデンスレベルB)。

 

【SGLT2阻害薬におけるKDIGO 2022 Guideline for Diabetes Management in Chronic Kidney Diseaseの記載】

・2型糖尿病に糖尿病性腎症を併発したeGFR ≥20 mL/min/1.73 m2の患者には、SGLT2阻害薬による治療が推奨される (推奨レベル1A)。

 

 

【GLP-1受容体作動薬におけるADA 2022 Standards of Medical Care in Diabetesの記載】

・ASCVD(アテローム性動脈硬化心血管疾患)または腎疾患を併発した2型糖尿病患者では、包括的な心血管リスクの低減および/または血糖降下レジメンの一部として、心血管疾患に対する有益性が実証されているSGLT2阻害薬またはGLP-1受容体作動薬が推奨される(エビデンスレベルA)。

 

【GLP-1受容体作動薬におけるKDIGO 2022 Guideline for Diabetes Management in Chronic Kidney Diseaseの記載】

・メトホルミンおよび SGLT2阻害薬による治療にも関わらず個別化された血糖目標を未達成またはこれらの薬剤を使用できない2型糖尿病合併CKD患者には、長時間作用型GLP-1 受容体作動薬を推奨する (推奨レベル1B)。

Diabetes Care. 2022 Dec 1;45(12):3075-3090.

【eGFR<45 mL/min/1.73 m2におけるSGLT2阻害薬の用量調節(掲載情報は、このコンセンサスレポートのガイダンスではなく、添付文書を反映している)】

・カナグリフロジン(最大100㎎/日):eGFR<30mL/min/1.73 m2の使用は推奨しないが、もし、透析まで腎臓と心血管への有益性を期待する場合は継続使用を検討する。

・ダパグリフロジン(10mg/日):eGFR<25mL/min/1.73 m2の使用は推奨しないが、もし、透析まで腎臓と心血管への有益性を期待する場合は継続使用を検討する。

・エンパグリフロジン(10mg/日):eGFR<20 mL/min/1.73 m2の使用は推奨しないが、もし、透析まで腎臓と心血管への有益性を期待する場合は継続使用を検討する。

・エルツグリフロジン:eGFR<45 mL/min/1.73 m2の使用は推奨しない

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