KDIGOリスクカテゴリーでの心血管・腎転帰に対するSGLT2阻害薬の影響



PubMed URL:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32994159/  

タイトル:Empagliflozin and Cardiovascular and Kidney Outcomes across KDIGO Risk Categories: Post Hoc Analysis of a Randomized, Double-Blind, Placebo-Controlled, Multinational Trial

<概要(意訳)>

背景:

EMPA-REG OUTCOME試験において、SGLT2阻害薬のエンパグリフロジンは、心血管疾患リスクの高い2型糖尿病患者の標準治療に追加することで、プラセボと比較して、心血管死の相対リスクを38%、心不全による入院を35%、腎症の発生または悪化を39%と大幅に減少させた。

本研究では、EMPA-REG OUTCOME試験のデータを使用して、KDIGOリスクカテゴリーにおける患者の心血管・腎転帰にエンパグリフロジンの治療効果に影響があるかどうかを評価した。

方法:

eGFR≧30 mL/min/1.73mのアテローム性動脈硬化性心血管疾患を合併した2型糖尿病患者の標準治療に加えて、エンパグリフロジン群(10mg/日または25mg/日)または、プラセボ群を無作為に割り付けた。

KDIGOリスクカテゴリーにおけるリスク別(低リスク、中リスク、高リスク、超高リスク)の心血管・腎転帰と安全性と全体結果との交互作用の有無について事後分析した。

結果:

2010年9月~2013年4月まで、合計7,028例の患者が無作為に割り付けられた。

42ヵ国の590施設で7,020例の患者が、1回以上の治験薬(エンパグリフロジン10mg 2,345例、エンパグリフロジン25mg 2,342例、プラセボ 2,333例)の投与を受けた。

治療期間の中央値は2.6年(IQR 1.9-3.4年)、観察時間の中央値は3.1年(IQR 2.2-3.6年) であり、97%の患者は試験を完了した。

7,020例の内、ベースラインのeGFRおよびUACR(尿中アルブミン/クレアチニン比) の測定値は6,952例(99%)で利用可能であった (エンパグリフロジン群 4,635例、プラセボ群 2,317例)。

ベースラインの患者特性と併用薬は、KDIGOリスクカテゴリー全体でエンパグリフロジン群とプラセボ群の間で類似していた。

KDIGOリスクカテゴリーにおける患者分布は、低リスクで約47%、中リスクで約29%、高リスクで15%、超リスクで8%であった。

Clin J Am Soc Nephrol. 2020 Oct 7;15(10):1433-1444.

「心血管イベント」の発生率は、エンパグリフロジン群とプラセボ群ともに、KDIGOリスクの上昇に比例していたが、各心血管転帰[3P-MACE(p=0.52)、致死的/非致死的心筋梗塞:(p=0.54)、致死的/非致死的脳卒中(p=0.26)、心血管死(p=0.859、心不全による入院(p=0.46)、全死(p=0.50)]における交互p値に有意な差はなく、プラセボと比較した、エンパグリフロジンの心血管イベントのリスク低下は、ベースラインのKDIGOリスクに関わらず、全体の結果と一貫していることが示された。

Clin J Am Soc Nephrol. 2020 Oct 7;15(10):1433-1444.

「腎イベント」の発生率は、エンパグリフロジン群とプラセボ群ともに、KDIGOリスクの上昇に比例していたが、各腎転帰[腎症の発症または悪化(p=0.60)、マクロアルブミンへの移行(p=0.16)、血清クレアチニンの倍化・腎代替療法の開始・腎疾患による死亡(p=0.29)]における交互p値に有意な差はなく、プラセボと比較した、エンパグリフロジンの腎イベントのリスク低下は、ベースラインのKDIGOリスクに関わらず、全体の結果と一貫していることが示された。

Clin J Am Soc Nephrol. 2020 Oct 7;15(10):1433-1444.

KDIGOリスクカテゴリーのサブグループ間におけるエンパグリフロジン群とプラセボ群の有害事象は、全ての有害事象と高カリウム血症で有意な交互作用が示されたが、その他の有害事象では同様の傾向が示された。

性器感染症を除く、その他の有害事象の発生率は、プラセボと同程度か、エンパグリフロジンの方が低い傾向であった。

Clin J Am Soc Nephrol. 2020 Oct 7;15(10):1433-1444.

結論:

心血管リスクの高い2型糖尿病患者の心血管・腎転帰に対するエンパグリフロジン(SGLT2阻害薬)のプラセボと比較した治療効果は、KDIGOリスクカテゴリー全体で一貫しており、

ベースラインのCKD状態(eGFR×アルブミン尿)に影響を受けないことが示された。

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