PubMed URL:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/31495881/
タイトル:Choice of endpoint in kidney outcome trials: considerations from the EMPA-REG OUTCOME® trial
<概要(意訳)>
背景:
血清クレアチニンの倍化は、eGFRの57%減少に相当し、末期腎不全 (ESKD)の代替として確立されている。
しかしながら、このエンドポイントは、臨床試験における長期間のフォローアップと大きなサンプルサイズが必要である。
本研究では、eGFRの低下閾値のレベルは、SGLT2阻害薬治療による腎転帰に影響するかどうかを調査した。
方法:
eGFR≧30 mL/min/1.73m2の心血管疾患リスクの高い2型糖尿病患者の標準治療に加えて、エンパグリフロジン群(10mg/日または25mg/日)または、プラセボ群を無作為に割り付けた。
eGFRの低下閾値別(ベースラインからのeGFR低下率が≧30、≧40、≧50、≧57%の4グループ)における「腎代替療法(RRT)の開始または腎死」の腎複合エンドポイントを評価した。
結果:
42ヵ国の590施設で合計7,020例の患者(プラセボ群2,333例、エンパグリフロジン群4,687例) が少なくとも1回の治験薬を投与された。
99%以上の患者は心血管リスクが高かった。
ベースラインにおける各群の人口統計学的および臨床的特徴はバランスが取れていた。
全体における患者の平均年齢は 63.1歳、71.5%は男性、平均BMIは30.6 kg/m2、平均eGFR は 74.0 mL/min/1.73 m2であった。
eGFR<60 mL/min/1.73 m2の割合は25.9%であり、正常アルブミン尿は59.4%、微量アルブミン尿は28.7%、尿蛋白は11.0% であった。
治療期間の中央値は2.6年、観察期間の中央値は3.1年で、治療群間で同様であった。
eGFR低下閾値別の腎複合イベントは、プラセボ群(2,323例)において、≧30で167例(7.2%)、≧40で86例(3.7%)、≧50で44例(1.9%)、≧57%で36例(1.5%)あった。
エンパグリフロジン群(4,687例)では、≧30で270例(5.8%)、≧40で100例(2.2%)、≧50で42例(0.9%)、≧57%で28例(0.6%)あった。
プラセボ群と比較したエンパグリフロジン群の「腎複合イベント(eGFR持続的低下の期間)」のハザード比[HR(95%CI)]は、それぞれ、
eGFR≧30%:HR 0.77(0.63-0.93)、RRR:23%、p=0.0077
eGFR≧40%:HR 0.55(0.41-0.73)、RRR:45%、p<0.0001
eGFR≧50%:HR 0.45(0.30-0.69)、RRR:55%、p=0.0002
eGFR≧57%:HR 0.37(0.23-0.61)、RRR:63%、p<0.0001
となり、エンパグリフロジンは、eGFR低下閾値に関わらず、プラセボより腎複合イベントを一貫して有意に低下させることが示された。
また、エンパグリフロジン群の相対リスク減少率(RRR)は、eGFR低下閾値が大きくなるにつれて、大きくなった。
Nephrol Dial Transplant. 2020 Dec 4;35(12):2103-2111.
プラセボ群と比較したエンパグリフロジン群の「腎複合イベント(eGFR持続的低下後の維持期間)」のハザード比[HR(95%CI)]は、それぞれ、
eGFR≧30%:HR 0.81(0.72-0.91)、RRR:19%、p=0.0003
eGFR≧40%:HR 0.69(0.57-0.82)、RRR:31%、p<0.0001
eGFR≧50%:HR 0.62(0.48-0.81)、RRR:38%、p=0.0005
eGFR≧57%:HR 0.49(0.35-0.68)、RRR:51%、p<0.0001
となり、エンパグリフロジンは、eGFR持続的低下の期間と維持期間においても同様の治療効果を示した。
Nephrol Dial Transplant. 2020 Dec 4;35(12):2103-2111.
次に、eGFRがベースラインから≧40および≧57%の持続的低下後の維持期間の腎複合イベントをベースライン特性別にサブ解析を実施したところ、有意な交互作用は示されず、一貫した結果が示された。
結論:
SGLT2阻害薬(エンパグリフロジン)は、ベースラインからのeGFR低下率(eGFR≧30%、≧40%、≧50%、≧57%)に関わらず、腎複合イベント(腎代替療法の開始または腎死)のリスクを一貫して低下させることが示された。