PubMed URL:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/31662305/
タイトル:Insulin Sensitivity and Renal Hemodynamic Function in Metformin-Treated Adults With Type 2 Diabetes and Preserved Renal Function
<概要(意訳)>
背景:
インスリン感受性の低下は、2型糖尿病(T2D)の青年期と境界型糖尿病の成人における糸球体過剰濾過と関連している。
しかし、これらの報告は、推算糸球体濾過量や簡便な推定法によるインスリン感受性、またはその両方の研究に基づいている。
2型糖尿病の成人を対象に、インスリン感受性と腎血行動態機能との関係をゴールドスタンダードな方法で検証した。
方法:
初回メトホルミン単剤療法[中央値1,500㎎(IQR:1,000-2,000mg)]中で腎障害のない2型糖尿病(T2D)患者を対象に、高インスリン正常血糖域クランプ法[参考:インスリン抵抗性を最も正確に評価する人口膵島を用いた臨床検査](M値)でインスリン感受性、尿中イヌリンクリアランスで糸球体濾過量(GFR)、パラアミノ馬尿酸クリアランスで有効腎血漿流量(ERPF)を評価した。濾過率(FF)は、GFR / ERPFで算出した。
インスリン感受性と腎血行動態機能パラメーターとの関係は、多変量線形回帰解析によって調査した。
腎血行動態機能パラメーター[糸球体濾過量(GFR)、濾過率(FF)、24時間尿中アルブミン排泄量]は、M値の三分位で層別化[低インスリン感受性:2.6±0.9、中インスリン感受性:5.2±0.6、高インスリン感受性:9.0±2.0]して調査した。
Diabetes Care 2020 Jan; 43(1): 228-234.
結果:
2016年7月~2018年3月の間に、75例の被験者がスクリーニングされ、2型糖尿病の43例(男性:77%、平均年齢:63 ± 7歳、BMI:31.2±4.0 kg/m2、HbA1c:7.4±0.6%)が調査対象となった。
平均GFR(糸球体濾過量)は110±26mL/min、FF(濾過率)は22.1±2.8%、24時間尿中アルブミン排泄量の中央値は11.3mg(四分位範囲:5.8〜17.0mg)であった。
目標血糖値を90㎎/dLとした場合の平均M値[参考:グルコース代謝率GIRの数値でインスリンの効き具合を診断。健常者は8-12で、インスリン抵抗性が高い人は6以下。]は、5.6 ± 2.9 mg/kglean/minであった。
単変量線形回帰分析により、インスリン感受性は、GFR(r=-0.44、p=0.004)およびFF(r=-0.40、p=0.008)と逆相関を示した。
しかし、ERPF(有効腎血漿流量)、FF(濾過率)、ERBF(有効腎血流量)、RVR(腎血管抵抗)、24時間尿中アルブミン排泄量との相関関係は示されなかった。
また、年齢、性別、RAS系阻害薬の使用、M値で調整した、多変量線形回帰分析においても、インスリン感受性は、GFR(R2=0.53、p<0.001)およびFF(R2=0.26、p=0.045)と逆相関を示した。
Diabetes Care 2020 Jan; 43(1): 228-234.
また、M値の三分位で層別化[低インスリン感受性:2.6±0.9、中インスリン感受性:5.2±0.6、高インスリン感受性:9.0±2.0]した各群における、
GFR(mL/min)、FF(%)、24時間尿中アルブミン排泄量(mg/day)の値との関係は、それぞれ、下記の結果となった。
GFR(糸球体濾過量):中インスリン感受性群(p=0.003)と高インスリン感受性群(p=0.010)と比較して、低インスリン感受性群は、有意に高かった。
FF(濾過率):高インスリン感受性群と比較して、低インスリン感受性群で有意に高かった(p=0.039)
24時間尿中アルブミン排泄量:有意な差は示されなかった。
Diabetes Care 2020 Jan; 43(1): 228-234.
結論:
本研究では、メトホルミン単剤で治療された2型糖尿病患者を対象に、ゴールデンスタンダードな方法でインスリン感受性の低下と腎血行動態機能パラメーターとの関連(糸球体濾過量および濾過率と逆相関)を初めて示した。
【参考情報】
インスリン感受性の標準的な測定法
https://www.jstage.jst.go.jp/article/tonyobyo/52/5/52_5_317/_pdf
高インスリン正常血糖域クランプ法