PubMed URL:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/31964290/
タイトル:Early Initiation of Direct Oral Anticoagulants After Onset of Stroke and Short- and Long-Term Outcomes of Patients With Nonvalvular Atrial Fibrillation
<概要(意訳)>
背景:
虚血性脳卒中を発症したNVAF(非弁膜症性心房細動)患者において、DOAC(直接経口抗凝固薬)の開始(再開)時期が転帰に与える影響を早期再開と後期再開の間で比較した。
方法:
多施設共同前向き観察研究(SAMURAI研究)における、急性虚血性脳卒中または一過性脳虚血発作を伴う1,192例のNVAF患者のデータから、入院中にDOACを開始(再開)した患者を含め、DOAC開始日(中央値)により2つのグループ(早期開始群、後期開始群)に分けた。
全ての被験者は、日本の脳卒中センター18施設で2011年9月~2014年3月の間に虚血性脳卒中またはTIA発症後7日以内に登録され、2年間追跡された。
有効性と安全性の転帰には、「3ヶ月および2年後の脳卒中または全身性塞栓症、大出血、死亡」が含まれた。
結果:
SAMURAI-NVAFデータセットの合計1,192例の内、499例が急性期入院中にDOACが開始(再開)された。
年齢の中央値は、75歳(IQR 69〜82歳)で、179例(35.9%)は女性であった。
DOAC再開日の中央値は、TIA患者で3日(IQR 1〜4日)、小梗塞患者で3日(IQR 2〜6日)、中程度の梗塞患者で4日(IQR 2〜7日)、大梗塞の患者で7日(IQR 3. 5〜10日)であった。
全体として、脳卒中発症からDOAC開始の中央値は4日(IQR 2〜7日)であった。
ゆえに、発症後3日以内にDOACを開始した223例が早期開始群に含まれ、発症後4日以降にDOACを開始した残りの276例が後期開始群に含まれた。
早期開始群では、後期開始群と比較して、ベースラインでの脳卒中発症前のAF診断(p=0.02)、持続性AF(p<0.01)の比率が高く、「NIHSSスコア(p<0.01)とCHA2DS2-VAScスコア(p=0.03)が低く、梗塞が小さかった(p<0.01)。
DOACには、リバーロキサバン、ダビガトラン、アピキサバンの順にバランスよく各群に含まれていた。
2年後のDOAC服薬継続率は、全体で85.2%(早期開始群:86.1%、後期開始群:83.8%)であった。
「脳卒中発症3ヶ月後の転帰」における、後期開始群を参照とした早期開始群の調整ハザード比は、それぞれ、
脳卒中または全身性塞栓症:HR 1.73 (95%CI 0.59–5.07)
大出血:HR 0.76 (95%CI 0.12–4.61)
死亡:HR 2.82 (95%CI 0.03–274.39)
となり、2群間での差は示されなかった。
「脳卒中発症2年後の転帰」における、後期開始群を参照とした早期開始群の調整ハザード比は、それぞれ、
脳卒中または全身性塞栓症:HR 0.86 (95%CI 0.47–1.57)
大出血:HR 1.39 (95%CI 0.42–4.60)
死亡:HR 0.61 (95%CI 0.28–1.33)
となり、2群間での差は示されなかった。
Stroke. 2020 Mar; 51(3): 883-891.
また、「脳卒中または全身性塞栓症」、「大出血」の調整ハザード比を、「年齢、体重、クレアチニンクリアランス、脳卒中発症前のAF診断、AFタイプ、CHA2DS2-VAScスコア、HAS-BLEDスコア、NIHSSスコア、梗塞サイズ」で検討したところ、「大出血」では交互作用は認められなかったが、「脳卒中または全身性塞栓症」では「脳卒中発症前のAF診断」で交互作用が認められた(p=0.02:脳卒中発症前にAFが診断された場合は、脳卒中または全身性塞栓症のリスクが低く、未診断の場合はその逆の傾向)。
Stroke. 2020 Mar; 51(3): 883-891.
結論:
脳卒中または全身性塞栓症、大出血、死亡を含むイベントの発症リスクは、虚血性脳卒中または一過性脳虚血発作を発症した非弁膜症性心房細動患者のDOACが3日以内(早期開始)と4日以降(後期開始)に開始(再開)されたかどうかに関わらず同等であった。
ゆえに、特に塞栓症の再発リスクが高い患者の場合は、重症の脳卒中でない限り、脳卒中発症後の数日以内にDOACの開始(再開)を避ける必要がないだろう。
【SAMURAI研究】