PubMed URL:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34215632/
タイトル:Prestroke Glucose Control and Functional Outcome in Patients With Acute Large Vessel Occlusive Stroke and Diabetes After Thrombectomy
<概要(意訳)>
目的:
脳卒中前の血糖コントロールが、大血管閉塞の急性脳卒中により動脈内血栓除去(IAT)治療を受けた糖尿病患者の機能的転帰と関連しているかを評価することを目的とした。
方法:
韓国の脳卒中臨床研究センターにおいて、2009年1月~2020年の3月の間に動脈内血栓除去(IAT)治療を受けた糖尿病を合併した急性大血管閉塞性脳卒中の患者を対象とした。
入院時のHbA1cレベルと機能的転帰[脳卒中3ヶ月後のmodified Rankin Scale(mRS)]との関連を評価した。
方法:
脳卒中の臨床研究センター-韓国登録から、2009年1月から2020年3月の間にIATを受けた糖尿病を伴う緊急の大血管閉塞性脳卒中の患者を含めました。
入院時のHbA1cレベル[5分位:Q1 ≦6.1%、Q2 >6.1–6.6%、Q3 >6.6–7.1%、Q4 >7.1–7.9%、Q5 >7.9% ]と機能的転帰(mRS)との関連を評価しました。
mRSの評価基準は、≦1(症候はあっても明らかな障害はない:日常の勤めや活動は行える)と≦2(軽度の障害:発症以前の活動がすべて行えるわけではないが、自分の身の回りのことは介助なしに行える)とした。
結果:
合計1,351例の被験者が分析された。
初期の神経学的悪化[END:脳卒中の再発、脳卒中の進行、症候性の出血、その他]のリスクは、入院時のHbA1cレベルが高い患者(HbA1c五分位間のp値=0.02、HbA1cカットオフ値のp値=0.003)の患者の方が、HbA1cレベルの低い患者よりも高かった。
機能的転帰レベル(mRS≧1)は、HbA1cレベルの低い患者の方が、入院時のHbA1cレベルが高い患者(HbA1c五分位間のp値=0.006、HbA1cカットオフ値のp値= 0.007)よりも高かった。
Diabetes Care. 2021 Sep;44(9):2140-2148.
これらの関連性を「年齢(≦80歳/>80歳)、性別、脳卒中サブタイプ(心臓塞栓症、大動脈アテローム血栓、その他)、閉塞部位(前部/後部)、血管再開通の評価[不完全、TICIグレード2b(血管の半分以上の領域の灌流)、TICIグレード3(末梢までの完全な灌流)]、血栓溶解療法[経動脈的血栓溶解療法(IAT)のみ、経静脈的血栓溶解療法(IVT)およびIAT]、鼠径部の穿刺までの時間(≦360分、>360分)、治療期間(2015年以前、2015年以後、全体)」で分類したサブ解析においても、交互作用は認められず一貫した結果が示された。
Diabetes Care. 2021 Sep;44(9):2140-2148.
結論:
脳卒中前の糖尿病患者の血糖コントロール目標をHbA1c7%以下にすることは、脳卒中のサブタイプ、経静脈内血栓溶解療法、閉塞部位、再開通グレード、治療期間等に関わらず、大血管閉塞の急性脳卒中により動脈内血栓除去(IAT)治療を受けた患者の神経学的回復に有益であることが示唆された。
【参考情報】
日本版modified Rankin Scale(mRS)判定基準書
https://www.jsts.gr.jp/guideline/350_351.pdf
mRS(modified Rankin Scale)とは
https://brainavi.com/cerebrovascular-accident/mrs
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