心不全サブタイプ間における再入院リスクの比較検討



PubMed URL:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32212327/ 

タイトル:Rehospitalization burden and morbidity risk in patients with heart failure with mid‐range ejection fraction

<概要(意訳)>

背景:

HFmrEF(LVEF40-49%の心不全)は、心不全(HF)の表現型としてESC(欧州心臓病学会)の心不全ガイドライン2016において明確に定義された。

その後のいくつかの研究では、疫学的、臨床的、予後について、HFrEF(LVEF<40%)とHFpEF(LVEF≧50%)と比較しているが結果は研究間でかなり異なっているが、罹患リスクに焦点を当てた研究はほとんどない。

ゆえに、本研究では、再発イベントリスク分析によって、心不全の3つのサブタイプにおける再入院リスクを調査した。

方法:

急性心不全(AHF)で当院(スペインのバレンシア大学病院)に入院した連続2961例の心不全患者を前向きに登録した。

そのうち、158例が入院中に死亡し、2,803例が調査対象となった。

被験者はLVEF(左室駆出率)により、LVEF≤40%;HFrEF(n=908、32.4%)、LVEF=41〜49%;HFmrEF(n=449、16.0%)、LVEF≥50%;HFpEF(n=1446、51.6%)と3つのサブタイプに分類した。

心不全の各サブタイプにおける「全ての原因による再入院」と「心不全による再入院」を主要評価項目として、「全ての原因による死亡」を二次評価項目として評価した。

結果:

追跡期間2.6年(中央値)[四分位範囲:1.0〜5.3]の間で、2,026例(72.3%)に、累計6,035回の「全ての原因による再入院」の発症があった。

その内、865例(42.7%)は3回以上、379例(18.7%)は5回以上も、「全ての原因による再入院」を繰り返していた。

「全ての原因による再入院」の発症数(/100人年)は、HFrEF(150.1)、HFmrEF(176.9)、HFpEF(163.6)となり、心不全サブタイプ間で差はなかった(p=0.097)。

多変量解析後の「全ての原因による再入院」のリスク比 [罹患率比;IRR(95%CI)] は、下記の如く、心不全サブタイプ間で差はなかった。

HFrEF(as reference)vs HFmrEF:[0.99 (0.77–1.27)、p=0.926]

HFpEF(as reference)vs HFmrEF:[0.93 (0.74–1.19) 、p=0.578]

HFrEF(as reference)vs HFpEF:[1.06 (0.85–1.32)、p=0.621]

HFpEF(as reference)vs HFrEF:[0.95 (0–76‐1.18)、p=0.621]

追跡期間2.6年の間で、1,144例(40.8%)に、累計2,245回の「心不全による再入院」の発症があった。

「心不全による再入院」の発症数(/100人年)は、HFrEF(76.9)、HFmrEF(95.4)、HFpEF(77.2)となり、心不全サブタイプ間で差はなかった(p=0.071)。

多変量解析後の「心不全による再入院」のリスク比[罹患率比;IRR(95%CI)]は、下記の如く、心不全サブタイプ間で差はなかった。

HFrEF(as reference)vs HFmrEF:[1.06 (0.77–1.46)、p=0.578]

HFpEF(as reference)vs HFmrEF:[1.11 (0.82–1.50)、p=0.511]

HFrEF(as reference)vs HFpEF:[0.96 (0.72–1.27)、p=0.761]

HFpEF(as reference)vs HFrEF:[1.04 (0.79–1.38)、p=0.761]

追跡期間2.6年の間で、1,663例(59.3%)が死亡した。「全ての原因による死亡」のリスクは、HFrEF患者が最も高かった。

多変量解析後の「全ての原因による死亡」のリスク比[罹患率比;IRR(95%CI)]は、下記の如く、心不全サブタイプ間で差はなかった。

HFrEF(as reference)vs HFmrEF:[0.96 (0.72–1.23)、p=0.779]

HFrEF(as reference)vs HFpEF:[0.96 (0.75–1.23)、p=0.758]

結論:

急性心不全で入院後における、HFmrEF患者の「全ての原因による入院」および「心不全による入院」のリスクは、HFrEFまたはHFpEF患者と同様であった。

HFmrEF患者が、心不全で重要な病態生理学的、臨床的、または治療的特異性を示すかどうかを解明する為の更なる研究が必要だろう。

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