急性心不全患者における尿中ナトリウム濃度と入院期間の関連



PubMed URL:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/31721249/ 

タイトル:Lower urine sodium predicts longer length of stay in acute heart failure patients: Insights from the ROSE AHF trial

<概要(意訳)>

背景:

急性心不全(AHF)で入院し、利尿薬投与後の尿中ナトリウム濃度(UNa)が低い患者では、入院期間の延長(LOS)と有害転帰リスクが上昇する可能性がある。

本研究では、利尿薬投与24時間における累積尿中ナトリウム濃度の予後的意義を多施設共同試験により調査した。

方法:

ROSE(腎最適化戦略評価)AHF試験では、急性心不全で入院した360例の患者を24時間以内に、標準治療薬[外来でのフロセミド(ループ利尿薬)の投与量(中央値)80mg/日、ACE阻害薬/ARBの投与率50%、β遮断薬の投与率83%]に追加した(低用量)ドーパミン群[強心薬を2μg/kg/分で72時間静注]、(低用量)ネシリチド群[ナトリウム利尿ペプチド(ハンプ)をボーラス投与なしで,0.005μg/kg/分で72時間静注]、プラセボ群に無作為に割り付けた。

各群の割り付け人数は、ドーパミン群:119例、ネシリチド群:122例、プラセボ群:119例であった。

尿中ナトリウムは、割り付け後24時間の畜尿サンプル298例分で測定された。

尿中低ナトリウム濃度(UNa)の定義は、≦60mmol/Lと定義した。

結果:

尿中ナトリウムの平均濃度は、62.9(±25.9)mmol/Lであった。

298例の24時間累積の尿中ナトリウム濃度は、尿中低ナトリウム群(≦60mmol/L、142例)と尿中高ナトリウム群(60mmol/L>、156例)の2群に分類した。

尿中低ナトリウム群は、尿中高ナトリウム群と比較して、「年齢が若く、収縮期血圧が低く、外来でのフロセミド(換算)用量が多く、血清ナトリウムが低く、血中尿素窒素が高い」という背景の違いがあった。

 

入院期間(中央値)は、尿中低ナトリウム群の方が有意に長かった(7日vs 5日、p<0.001)。

7日を超える入院期間の割合は、尿中低ナトリウム群の方が有意に多かった(45% vs 23%、p<0.001)。

退院時又は割り付け7日後にうっ血所見が認められた割合は、尿中低ナトリウム群の方が有意に多かった(49% vs 37%、p=0.030)。

72時間後の体重減少は、尿中低ナトリウム群の方が有意に少なかった[5.7ポンド(2.585kg) vs 9.0ポンド(4.082kg)、p<0.001]。

一方で、72時間後の「尿量と急性腎障害(Cre>0.3の上昇)」は、両群間で差はなかった。

Clin Cardiol. 2020 Jan; 43(1):43-49.

「60日間における死亡または心不全再入院」の複合イベントは、尿中低ナトリウム群で45例(32%)、尿中高ナトリウム群で31例(20%)発生した。

また、ベースラインのeGFRと外来のフロセミド(換算)用量を調整したCox回帰モデルによる調整ハザード比は、HR 1.41(95%CI 0.88-2.27)となり、両群間で差はなかった。

Clin Cardiol. 2020 Jan; 43(1):43-49.

「入院期間(中央値)」と「60日間における死亡または心不全再入院」の予測因子を「尿中ナトリウム濃度の高/低値と24時間畜尿量の多/少(中央値2875mL>/≦2875mL)値」で検討したところ、

24時間畜尿量(が中央値を上回っているか下回っているか)に関わらず、尿中低ナトリウム濃度は、「入院期間(中央値)」と「60日間における死亡または心不全再入院」の強力な予測因子であることが示された。

Clin Cardiol. 2020 Jan; 43(1):43-49.

さらに、尿中ナトリウム濃度(mmol/L)を5群[極小:20-37、小:38-54、中:55-68、高:69-87、極高:88-136]に分類し、「入院期間、体重減少、死亡または心不全再入院」との関係を検討したところ、尿中ナトリウム濃度の低下に伴い、入院期間が延長し、体重が減少しにくく、死亡または心不全再入院率が上昇することが示された。

Clin Cardiol. 2020 Jan; 43(1):43-49.

結論:

腎障害(eGFR 15-60mL/分/1.73m²)のある急性心不全で入院した患者では、24時間尿中ナトリウム濃度が低い(≦60mmol/L)場合、長期入院リスクが高くなることが示された。

 

参考情報:

ROSE AHF試験

https://www.ebm-library.jp/circ/conferences/aha2013/aha2013_ROSEAHF.html

https://jamanetwork.com/article.aspx?articleid=1779722 

尿中ナトリウム濃度 基準値・異常値

https://primary-care.sysmex.co.jp/speed-search/index.cgi?c=speed_search-2&pk=773 

電解質のmEq/L単位からSI単位への変換

https://sysmex-support.com/jp/section/faq/biochemistry_electrolyte_bloodgas/13631.html 

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