急性心不全患者にSGLT2阻害薬を早期追加した利尿効果と腎機能に与える影響



PubMed URL:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35766022/ 

タイトル:Effects of Early Empagliflozin Initiation on Diuresis and Kidney Function in Patients With Acute Decompensated Heart Failure (EMPAG-HF)

<概要(意訳)>

背景:

急性非代償性心不全患者に対するループ利尿薬の効果的な利尿療法は、腎機能の悪化によって制限されることがよくある。

SGLT2阻害薬は、安定した心不全患者において尿糖およびナトリウムの排泄と腎保護効果をもたらすが、急性非代償性心不全患者においては不明である。

方法:

この単施設、前向き、二重盲検、プラセボ対照、無作為化研究では、急性非代償性心不全の患者(18歳~85歳、BNP>100 pg/mLまたはNT-proBNP>300 pg/mL、2型糖尿病または耐糖尿異常の有無に関わらない)に対するループ利尿薬を含む標準的なうっ血緩和治療に加えて、エンパグリフロジン25 mg/日またはプラセボに無作為に割り付けた。

1 型糖尿病、eGFR<30 mL/min/1.73m2、透析治療が必要な末期腎不全、急性腎障害 (ステージ≧2または透析治療を必要とする)、フロセミドに対する禁忌または不耐性、うっ血所見のないドライな急性心不全患者等は除外した。

 

主要評価項目は、「入院後12時間以内の治療開始から5 日間の累積尿量」とした。

副次評価項目には、「利尿効率、腎機能および損傷マーカーのダイナミクス、および NT-proBNP」を含めた。

結果:

急性非代償性心不全の入院から12時間以内に60例の患者が無作為に割り付けられた。

急性非代償性心不全の標準治療に対するエンパグリフロジン25mg/日の追加は、プラセボと比較して、5 日間の累積尿量が25%増加することが示された [10.8 vs 8.7 L(中央値)、推定群間差 2.2(95% CI 8.4-3.6)] ; p=0.003]。

 

また、エンパグリフロジン25mg/日の追加は、プラセボと比較して、腎機能[eGFR 51±19 vs 54±17 mL/min/1.73m² ; p=0.599]と腎障害マーカー[総蛋白492±845 vs 503±847 mg/gクレアチニン ; p=0.975、α1-マイクログロブリン55.4±38.6 vs 31.3±33.6 mg/gクレアチニン ; p=0.066]に影響を与えることなく、利尿効率[推定群間差の尿量14.1mL/フロセミド換算1mg(95% CI 0.6-27.7); p=0.041] を高めることが示された。

 

5日間のNT-proBNPはエンパグリフロジン群でプラセボ群と比較して顕著な低下が示された[-1,861 vs -727.2 pg/mL; quotient in slope 0.89(95%CI 0.83-0.95); p<0.001]。

安全性に関しては、両群間で差は見られなかった。

Circulation. 2022 Jul 26;146(4):289-298.

結論:

エンパグリフロジン25mg/日(SGLT2阻害薬)を急性代償性心不全患者の標準的な利尿薬療法に早期に追加することは、腎機能に影響を与えることなく尿量を増加させることが可能である。

 

【参考情報】

α1-マイクログロブリン

α1-マイクログロブリン | SRL総合検査案内

総蛋白

総蛋白 (TP) | SRL総合検査案内

急性腎障害(AKI)の最新診療

日本内科学会雑誌第108巻第6号 (jst.go.jp)

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