ESCガイドライン2021 急性慢性心不全における診断と治療の10戒



PubMed URL:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34922348/ 

タイトル:The ‘Ten Commandments’ of the 2021 ESC Guidelines for the diagnosis and treatment of acute and chronic heart failure

<概要(意訳)>

「急性および慢性心不全の診断と治療」における「ESCガイドライン2021」の「10戒」を下記に示す。

1)「アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬、アンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬(ARNI)、β遮断薬、ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MRA)、SGLT2阻害薬」は、「全てのHFrEF(LVEFが40%以下)患者」の「死亡率と心不全による入院を減らす為の基礎治療薬」として「推奨」され、「左室駆出率がやや低下した心不(HFmrEF:LVEFが41-49%)患者」には「考慮」される。(補足:これらの薬剤を使用し3カ月以上経過しても改善が見られない場合は、デバイス治療を検討する。)

 

2)「左脚ブロック(LBBB)でQRS幅が150msec以上」の「洞調律で左室駆出率(LVEF)35%以下の心不全患者」には、心臓再同期療法(CRT:薬剤抵抗性心不全患者の予後を改善させる確立された治療法)が「推奨」される。

「左脚ブロック(LBBB)でQRS幅が130~149msecまたは非左脚ブロックでQRS幅が150msec以上」の場合には、「考慮すべき」である。

「非左脚ブロックでQRS幅が130~149msec」の場合には、「考慮可」である。

 

3)左室駆出率(LVEF)35%以下の心不全患者の病因が「虚血性」の場合は、植込み型除細動器(ICD)が「推奨」される。

病因が「非虚血性」の場合は、必要に応じて「考慮すべき」である。

 

4)難治性の重症心不全の治療では、「心臓移植」が「推奨」され、機械により循環のサポートをする「機械的補助循環法」は「考慮すべき」である。

 

5)急性心不全の治療には、特定の原因(つまり、急性冠症候群、高血圧緊急症、不整脈、機械的原因、肺塞栓症、感染症、タンポナーデ)と利尿薬、血管拡張薬、変力作用薬、昇圧薬、短期間の機械的サポート、腎代替療法の治療が含まれる。

これらの治療の適応とそのタイミングは、臨床症状(つまり、急性非代償性心不全、急性肺水腫、孤立性右心室不全、心原性ショック)と重症度によって異なる。

 

6)心不全入院の退院前、退院後1~2週間での早期フォローアップでは、うっ血の兆候と薬剤耐性を評価し、エビデンスに基づく治療の開始/漸増をすることが推奨される。

 

7)心不全患者には、定期的に「貧血と鉄欠乏」のスクリーニングをすることが推奨される。

「血清フェリチン<100 ng/mL未満」、または「トランスフェリン飽和度(TSAT)<20%かつ血清フェリチン100〜299 ng/mL」の左室駆出率(LVEF)<45%の症候性心不全患者の症状とQOLを改善する為に、および最近心不全で入院したLVEF<50%の心不全患者の再入院のリスクを軽減する為に、カルボキシマルトース第二鉄(鉄剤)の静注を考慮すべきである。

 

8)心房細動が心不全症状の悪化と関連している場合、カテーテルアブレーション (肺静脈隔離術)によるリズムコントロールを考慮すべきである。

 

9)二次性の僧帽弁逆流症(僧帽弁閉鎖不全症)の心不全患者は、多職種から成るハートチームによって評価される必要がある。治療適応[補足:十分な薬物治療を受けていてもなお症状を有している方で、外科手術が困難な方が治療の適応となる。具体的には、下記条件を1つ以上有する。・75歳以上・心機能が低下している(EF40%未満)・過去に開胸手術や心臓手術を受けている・開存している冠動脈バイパスがある・大動脈の高度石灰化・体力が低下している(フレイル)・重症な肺疾患がある・肝硬変・重度な頸動脈狭窄がある・縦隔の放射線治療歴がある・縦隔炎の既往がある・癌と診断されている・米国胸部外科学会(STS)による予測手術死亡率が8%以上である]が満たされる場合は、経皮的僧帽弁接合不全修復術(マイトラクリップ®)による治療を考慮すべきである。

 

10)65歳以上で左心室肥大のあるハイリスクな心不全患者は、心アミロイドーシスのスクリーニング検査を受けるべきである。

NYHA I度またはII度の症状とトランスサイレチン型心アミロイドーシス(ATTR-CM)のある患者には、「症状、心血管系による入院、死亡率」を軽減するタファミジス[成人の トランスチレチン アミロイドーシス (ATTR)の疾患進行を遅らせるために使用される医薬品]が推奨される。

Eur Heart J. 2021 Dec 18;ehab853.

European Heart Journal (2021) 42, 3599-3726

【参考情報】

2021 ESC Guidelines for the diagnosis and treatment of acute and chronic heart failure

https://academic.oup.com/eurheartj/article/42/36/3599/6358045 

ESC心不全ガイドラインが改訂

https://medical.jiji.com/news/46961 

高血圧緊急症

https://medley.life/diseases/5505a8c86ef4586d3a85ceb7/ 

TSAT (トランスフェリン飽和度)とは?~貧血の状態を知るために~

https://mibyou-pharmacist.com/2021/05/11/tsat-transferrin-saturation/ 

経皮的僧帽弁接合不全修復術(マイトラクリップ®)とは?

経皮的僧帽弁接合不全修復術(マイトラクリップ®) | 広島大学大学院 医系科学研究科 循環器内科学 (hiroshima-u.ac.jp)

マイトラクリップ/心不全治療チーム

https://www.mito-saiseikai.jp/department/cardiovascular/mitraclip 

僧帽弁閉鎖不全症(僧帽弁逆流症)の手術

https://www.mito-saiseikai.jp/department/cardiovascular/mitraclip 

心アミロイドーシスの診断

採血検査 | 2020年版 心アミロイドーシス診療ガイドライン | 遺伝性ATTRアミロイドーシス(FAP).jp (hattramyloidosis.jp)

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