HFrEF患者の臨床表現型に応じた治療アルゴリズム



PubMed URL:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34627725/ 

タイトル:Drug Layering in Heart Failure: Phenotype-Guided Initiation

<概要(意訳)>

心不全患者の予後改善が示されているほとんど全ての薬剤が、「心拍数、血圧、腎機能、電解質バランス」に影響を与えることを考慮すると、個々の患者特性に応じて最適な治療法を検討することは重要である。

 

さらに、予後改善薬を段階的に開始しなければいけない理由はない為、これらの薬剤を同時に開始し、患者特性と薬効に応じて異なる薬剤を導入することは合理的である。

 

患者プロファイルは、「心不全患者の転帰と心不全治療の忍容性と有効性」に影響を与える下記の臨床表現型を特定することができる。

・正常~高心拍数/低血圧

・低心拍数/低血圧

・正常~高心拍数/正常~高血圧

・低心拍数/正常~高血圧

・心房細動/低血圧

・心房細動/正常~高血圧

・腎機能障害/カリウム異常

JACC Heart Fail. 2021 Sep 30;S2213-1779(21)00326-7.

次に、推奨される心不全患者のプロファイルに応じた治療アルゴリズムを示す。

(ただし、臨床表現型が変化する可能性、コストの問題、患者の好みを考慮する必要がある。)

 

先ずは、必須薬剤[ACE阻害薬またはARNI(アンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬)、β遮断薬、MRA(鉱質コルチコイド受容体拮抗薬)、SGLT2阻害薬]の治療開始後、これらの薬剤は患者プロファイルに応じて漸増することが必要である。

 

他の薬剤は患者特性に応じて開始する必要がある[心拍数が70拍/分以上の患者にはイバブラジン、重度の心不全患者にはドパミン/ノルエピネフリンを開始する。左室補助人工心臓(LVAD)、ジゴキシン(Dig)、抗凝固療法(A/C)は、個々のリスクに応じて心房細動の血栓塞栓性合併症を予防するために推奨される。硝酸イソソルビド(H-ISMN)は、うっ血の緩和に役立つ可能性があり、アフリカ系アメリカ人で効果的である。]

また、腎機能障害またはカリウム異常のある患者は、各薬剤の薬理学的特性に応じた用量調整が必要である。

 

具体的には、

「低心拍数/低血圧」の場合、必須薬剤に加えて、「ドパミン/ノルエイネフリンとLVAD(左室補助心臓)」の治療が推奨される。

「正常~高心拍数/低血圧」の場合、必須薬剤に加えて、「イバブラジン」の治療が推奨される。

「心房細動/正常~高血圧」の場合、必須薬剤に加えて、「ジゴキシン、抗凝固療法」の治療が推奨される。

「心房細動/低血圧」の場合、必須薬剤に加えて、「ジゴキシン、抗凝固療法」の治療が推奨される。

「正常心拍数/正常~高血圧」の場合、必須薬剤に加えて、「硝酸イソソルビド(H-ISMN)」の治療が推奨される。

「正常~高心拍数/正常~高血圧」の場合、必須薬剤に加えて、「イバブラジン」の治療が推奨される。

JACC Heart Fail. 2021 Sep 30;S2213-1779(21)00326-7.

HFrEF患者の治療介入は、患者特性(生理学的パラメーター、併存疾患)が薬剤の漸増を制限するため、困難なことが多い。

患者の治療薬へのアクセスは、入手可能性、コストの問題、医師の治療方針によっても制限される可能性があり、世界の個々の地域で特定の問題が発生している。

将来の心不全ガイドラインは、HFrEF患者の治療アルゴリズムを再評価して、迅速な心不全治療の実施を可能にする必要がある。

HFrEF患者における多剤併用療法は、平均余命を最大8.4年延長する可能性があることを考慮すると、将来的には、臨床診療における最良の投薬戦略を特定する臨床研究が必要になるだろう。

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