HFrEF患者に対する新しい治療アルゴリズムの提案



PubMed URL:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33378214/ 

タイトル:How Should We Sequence the Treatments for Heart Failure and a Reduced Ejection Fraction?: A Redefinition of Evidence-Based Medicine

<概要(意訳)>

【HFrEF患者の新しいアルゴリズムの提案】

第一に、心不全(HF)治療の各基礎薬の治療効果は、併用による影響をうけない。

具体的には、MRAの使用はANRIの有効性に影響を与えず、ANRIの使用はSGLT2阻害薬の有効性に影響を与えない。

 

第二に、基礎薬は低用量から開始しても死亡リスクを減少させるのに効果的である。

「エナラプリル(ACE阻害薬)、カルベジロール(β遮断薬)、エプレレノン(MRA)」は、大規模臨床試験の目標用量に達する低用量でも、心不全による死亡と入院リスクの減少に有効であることが示されている。

「SGLT2阻害薬」の場合、開始用量は目標用量と同等である。

 

第三に、新しいクラスのHF治療薬を追加することは、既存の薬剤クラスを漸増するよりベネフィットが大きい。

実際に、ACE阻害薬またはARBを3~7倍の用量に増加しても、「β遮断薬、ANRI、SGLT2阻害薬」を追加することで得られる死亡リスクの低下は認められない。

 

第四に、HF治療の各基礎薬の併用は、安全性と忍容性の向上に寄与する。

具体的には、「ANRI」は、「ACE阻害薬またはARBの使用による腎不全のリスクを減少」し、「ANRIとSGLT2阻害薬の併用」は、「MRAの使用による高カリウム血症のリスクを最小化」することが可能である。

 

第五に、HF治療の基礎薬のベネフィットは、治療開始から30日以内という短期間で得られるため、4週間以内に4つの基礎薬全ての治療介入が必要かつ重要である。

 

今回、我々が提案する新しい治療アルゴリズムは、「利尿薬」の治療によって「体液状態が正常範囲内(euvolemia)」にあるHFrEF患者に開始する3つの治療ステップがある。

Circulation. 2021 Mar 2; 143(9):875-877.

ステップ1は、「β遮断薬とSGLT2阻害薬」による治療を同時に開始することである。

 「β遮断薬」は、HFrEF(LVEF<40%)患者の治療、特に「突然死リスク」の減少に関して、最も有効なHF治療薬だろう。

また、「心不全による入院リスク」を大幅に減少させる「SGLT2阻害薬」のメリットは、「β遮断薬」による治療開始後に起こりうる短期間の「心不全悪化リスク(導入初期の心機能低下によるうっ血)」を軽減する可能性があるだろう。

 

ステップ2は、ステップ1から「1〜2週間以内」に「ANRI(アンギオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬;サクビトリル/バルサルタン)」を追加することである。

もし、HF患者の収縮期血圧が100mmHg未満の場合は、ANRIに切り替える前に、低血圧に対する忍容性をRAS系阻害薬(ARB/ACE阻害薬)で評価するのが賢明だろう。

また、血圧コントロールは通常、反復投与または同時に投与される利尿薬の投与量で調整する。

 

ステップ3は、血清カリウム値が正常で腎機能が著しく低下していない場合、ステップ2から「1〜2週間以内」に「MRA(ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬;カリウム保持性利尿薬)」を追加することである。

ANRIは「腎機能を改善」し、ANRIとSGLT2阻害薬の併用は「MRAによる高カリウム血症のリスクを減少」する為、MRAの忍容性を高める可能性がある。

 

これらの治療ステップ1~3で、基本的な心不全治療を4週間以内に導入できるので早期から生命予後の改善が期待できるだろう。

また、その後は、各薬剤クラスの「目標用量への漸増」をすることが必要かつ重要であろう。

 

【参考情報】

心不全TOPICS#07 心不全にβ遮断薬とSGLT2阻害薬併用から始める!?[心不全・心機能アカデミー]

https://www.youtube.com/watch?v=017sxfpBjUE 

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