SGLT2阻害薬がHFrEF患者の細胞外液量・血漿量・eGFRに与える影響



PubMed URL:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33357505/ 

タイトル:Effects of empagliflozin on estimated extracellular volume, estimated plasma volume, and measured glomerular filtration rate in patients with heart failure (Empire HF Renal): a prespecified substudy of a double-blind, randomised, placebo-controlled trial

<概要(意訳)>

背景:

SGLT2阻害薬は、HFrEF患者の有望な治療選択肢であることが示されている。

本研究ではHFrEF患者の推定細胞外液量[参考:細胞外液量(体重の20%)=間質液量(体重の15%)+管内細胞外液量(体重の4%:血漿量、1%:リンパ液、髄液)]、推定血漿量、推算糸球体濾過量(eGFR)に対するSGLT2阻害薬(エンパグリフロジン10㎎/日)の影響を調査した。

方法:

Empire HF Rena試験は、EmpireHF試験で事前に指定したサブ研究である。

本研究は、デンマークの心不全外来クリニック4施設から患者をリクルートして、Herlev and Gentofte 大学病院で実施された。

ガイドラインに基づく心不全治療を受けているNYHA分類Ⅰ~Ⅲ度のHFrEF(LVEF≦40%)患者を対象に、SGLT2阻害薬またはプラセボを無作為に割り付け、1日1回12週間投与した。

主要評価項目は、「2群間におけるベースラインから12週間の推定細胞外液量、推定血漿量、eGFRの平均差」とした。

安全性分析を除くすべての分析は、ITT解析で行われた。

結果:

2017年6月29日~2019年7月15日の間に、391例の患者の適格性が評価され、その内120例(31%)が無作為にSGLT2阻害薬(60例)またはプラセボ(60例)に割り付けられた。また、その内105例(88%)は、糖尿病を罹患していなかった。

「推定細胞外容量と推定血漿量」のITT解析には、SGLT2阻害薬群の60例(100%)とプラセボ群の59例(98%)が含まれていた。

「eGFR」のITT解析には、SGLT2阻害薬群の59例(98%)とプラセボ群の58例(97%)が含まれていた。

ベースラインの患者特性は、2群間で類似していた。

全ての患者はガイドラインに基づく最適な心不全治療を受けており、大部分がレニン-アンギオテンシン-アルドステロン系阻害薬、β遮断薬、ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MRA)で治療されていた。

試験期間の間に、SGLT2阻害薬群の2例(3%)とプラセボ群の4例(7%)で、心不全治療薬の用量が変更された。

利尿薬の投与量の変更は、SGLT2阻害薬群の9例(15%)とプラセボ群の10例(17%)で行われ、投与量の減少または増加の患者数には差はなかった。

ベースライン時または試験期間の間に、輸血またはエリスロポエチンやその類似体を投与された患者はいなかった。

治療順守率の中央値は、100%(IQR 99–100)であった。

プラセボ群の1例(2%)の治療順守率は、80%未満であった。

 

「ベースラインから12週間の推定細胞外液量の(平均)変化量」は、

SGLT2阻害薬群:16.4 L [±1.6] ⇒ 16.3 L [±1.6]

プラセボ群:16.9 L [±1.6] ⇒ 17.0 L [±1.5]

となり、平均差は、-0.12L(95%CI -0.18~-0.05)、p=0.00056となった。

 

「ベースラインから12週間の推定血漿量の(平均)差」は、プラセボ群と比較したSGLT2阻害薬群の平均差は、-7.3%(95%CI -10.3~-4.3)、p<0.0001となった。

 

「ベースラインから12週間のeGFR(mL/min)の(平均)変化量」は、

SGLT2阻害薬群:77.8 [±23.7] ⇒ 71.2 [±23.4]

プラセボ群:83.7[±28.2] ⇒ 83.8 [±27.3]

となり、平均差は、-7.5(95%CI -11.2~-3.8)mL/min、p=0.00010となった。

 

主要評価項目(ベースラインから12週間の推定細胞外液量、推定血漿量、eGFRの平均差)のサブ解析をベースラインの「年齢、性別、左室駆出率、NT-proBNPレベル、eGFRレベル、HbA1cレベル、サクビトリル-バルサルタンによる治療の有無、ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬による治療の有無、ループ利尿薬による治療の有無、2型糖尿病の有無」で

実施したところ、全体の結果と一貫した結果が示された(全てのp>0.050)。

Lancet Diabetes Endocrinol. 2020 Dec22; s2213-8587(20)30382-X.

結論:

ガイドラインに基づいた心不全治療を受けているHFrEF患者(糖尿病の罹患率12%)にSGLT2阻害薬(エンパグリフロジン10㎎/日)を1日1回12週間投与することで、推定細胞外液量、推定血漿量、推算糸球体濾過量が有意に減少した。

これらの体液量(細胞外液量)の減少は、心不全におけるSGLT2阻害薬の臨床的メリットの重要な根本的なメカニズムであることが示唆される。

一方でeGFR低下の根本的なメカニズムは完全には理解されておらず、この低下が腎血行動態または他のメカニズムの有益な変化を反映しているかどうかは、今後、HFrEF患者を対象とした長期の腎保護効果を調査する必要があるだろう。

 

【参考情報】

体液の生理のキホンを知ろう! 

https://www.jmedj.co.jp/premium/yueki/data/0001/ 

体液の種類【細胞内液・細胞外液・管外細胞外液】

https://clinical-engineers.com/body-fluid/ 

循環血液量と血漿量

https://plaza.rakuten.co.jp/54120326/diary/200812160000/ 

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