日本の高齢者糖尿病における適切エネルギー摂取量と全死亡率の関連性評価



PubMed URL:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/31820841/ 

タイトル:Assessing the association between optimal energy intake and all-cause mortality in older patients with diabetes mellitus using the Japanese Elderly Diabetes Intervention Trial

<概要(意訳)>

背景:

高齢の糖尿病患者は、身体機能と併存疾患に大きな個人差がある為、食事療法に適切なエネルギー摂取量を設定することは困難である。

日本では、1日の適正な総エネルギー摂取量(kcal)は、標準体重(kg)に身体活動量(kcal/kg標準体重:軽労作/普通の労作/重い労作)を掛けることで求められるが、この計算方法を高齢者に適用することを支持するエビデンスは極めて少ない。

本研究では、高齢の糖尿病患者のエネルギー摂取量と死亡率の関連性から適切なエネルギー摂取量を評価した。

方法:

756人の高齢者糖尿病患者を前向きに6年間追跡したデータ(JEDIT研究)から、ベースラインの栄養摂取量と死亡率との関連性を評価した。

総エネルギー摂取量と栄養素を評価し、[実際の体重]あたりのエネルギー摂取量を四分位数(Q1≦24.85、Q2:24.86-29.73、Q3:29.74-34.78、Q4≧34.79)に分類した。

[標準体重(kg):身長(m)×身長(m)×22]、または[高齢者の年齢を考慮した目標体重(kg):身長(m)×身長(m)×22~25の間で柔軟に設定することを推奨(糖尿病診療ガイドライン2019)]あたりのエネルギー摂取量は、同じプロトコルを使用して統計的データ解析を実施した。

結果:

[実際の体重]あたりのエネルギー摂取量の分析による死亡率の調整ハザード比は、Q3を1とした場合、Q1[HR 3.83(95%CI 1.62-9.09)、p=0.002]とQ4[HR 1.60(95%CI 0.64-4.00)、p=0.313]で著しく上昇し、Q2[HR 0.92(95%CI 0.31-2.72)、p=0.883]が最も低かった。

[標準体重]あたりのエネルギー摂取量の分析による死亡率の調整ハザード比は、Q3を1とした場合、Q1[HR 3.88(95%CI 1.53-9.79)、p=0.004]とQ4[HR 2.23(95%CI 0.83-6.03)、p=0.114]で著しく上昇し、Q3が最も低かった。。

Geriatr Gerontol Int. 2020 Jan;20(1):59-65.

[年齢を考慮した目標体重]あたりのエネルギー摂取量の分析による死亡率の調整ハザード比は、Q3を1とした場合、Q1[HR 2.64(95%CI 1.19-5.88)、p=0.017]とQ4[HR 1.58(95%CI 0.62-4.05)、p=0.337]で著しく上昇し、Q3が最も低かった。

Geriatr Gerontol Int. 2020 Jan;20(1):59-65.

また、サブ解析による「75歳未満」の死亡率の調整ハザード比は、Q3を1とした場合、Q1[HR 2.98(95%CI 1.02-8.70)、p=0.045]が最も高く、Q2[HR 0.63(95%CI 0.15-2.66)、p=0.525]が最も低かった。

「75歳以上」の死亡率の調整ハザード比は、Q3を1とした場合、Q1[HR 7.88(95%CI 1.59-39.1)、p=0.012]が最も高く、Q3が最も低かった。

Geriatr Gerontol Int. 2020 Jan;20(1):59-65.

結論:

高齢の糖尿病患者における[実際の体重]あたりのエネルギー摂取量と死亡リスクの間には、U字型の関係が観察された。

[標準体重]、または[年齢を考慮した目標体重] あたりのエネルギー摂取量における分析でも同様の結果が得られた。

ただし、[実際の体重]あたりのエネルギー摂取量と死亡リスクの四分位数は、[標準体重]よりも、[年齢を考慮した目標体重]あたりのエネルギー摂取量の方が類似していた。

 [実際の体重]、または[年齢を考慮した目標体重]あたりの適切なエネルギー摂取量は、年齢と身体状態に応じて、25〜35(kcal/kg標準体重)の広い範囲となった。

つまり、[標準体重]よりも、日本糖尿病学会の「糖尿病診療ガイドライン2019」で推奨されている[年齢を考慮した目標体重]あたりのエネルギー摂取量を指示した(過不足なくエネルギー量を設定できる)結果となった。

エネルギー摂取量のレベルとその構成要素が、より良い身体機能、生活の質、生存に繋がるかどうかは、今後の更なる研究が必要だろう。

 

【参考情報】

糖尿病の食事のはなし

http://dmic.ncgm.go.jp/general/about-dm/040/020/02-1.html

「食」で向き合う糖尿病 「あなたの適量がわかった‼」 食べ過ぎ・食べなさ過ぎの危険性

https://www.tmghig.jp/research/release/2019/1125.html

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