日本人健診集団における前糖尿病・糖尿病の死亡リスク



PubMed URL:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33441421/ 

タイトル:Prediabetes, Diabetes, and the Risk of All-Cause and Cause-Specific Mortality in a Japanese Working Population: Japan Epidemiology Collaboration on Occupational Health Study

<概要(意訳)>

背景:

前糖尿病(糖尿病予備群)は死亡リスクを高めることが示唆されているが、そのリスクを予測できる前糖尿病の基準は依然として明らかでない。

本研究では、日本人健診集団を対象として、「米国糖尿病学会(ADA)と世界保健機関(WHO)/国際専門委員会(IEC)」の前糖尿病の基準と「全死亡、心血管死、がん死」のリスクとの関連を前向きに調査した。

方法:

このJ-ECOH研究には、2010年~2011年に職場健診を受けた民間企業の労働者62,785例を2019年まで追跡調査した。

前糖尿病は、ADA(HbA1c 5.7~6.4%または空腹時血糖100~125mg/dL)とWHO/IEC(HbA1c 6.0~6.4%または空腹時血糖110~125mg/dL)の2つの基準に従って定義した。

Cox 比例ハザード回帰モデルを使用して、「糖尿病状態(正常、前糖尿病、糖尿病)」における「全死亡、心血管死、がん死」のリスクを「2つの国際基準」別に調査した。

結果:

ベースラインにおける前糖尿病の有病率は、ADA基準(HbA1c 5.7~6.4%または空腹時血糖100~125mg/dL)で38.4%、WHO/IEC基準(HbA1c 6.0~6.4%または空腹時血糖110~125mg/dL)で12.8%であった。

最大で7年の追跡期間中に、全死亡は229例、心血管死は57例、がん死は97例であった。

「年齢、性別、勤務先、BMI、喫煙、高血圧、脂質異常症」で調整した前糖尿病(ADA基準)のハザード比[HR(95%CI)]は、正常血糖と比較して、それぞれ、

全死亡:1.53 (1.12–2.09)

がん死:2.37 (1.45–3.89)

心血管死:1.00 (0.52–1.93)

となり、「全死亡」、「がん死」において有意なリスク増加の関連が示された。

「年齢、性別、勤務先、BMI、喫煙、高血圧、脂質異常症」で調整した前糖尿病(WHO/IEC基準)のハザード比[HR(95%CI)]は、正常血糖と比較して、それぞれ、

全死亡:1.46 (1.02–2.09)

がん死:2.03 (1.24–3.32)

心血管死:0.93 (0.42–2.08)

となり、ADA基準の場合と同様に、「全死亡」、「がん死」において有意なリスク増加の関連が示された。

また、「年齢、性別、勤務先、BMI、喫煙、高血圧、脂質異常症」で調整した糖尿病(ADA基準)のハザード比[HR(95%CI)]は、正常血糖と比較して、それぞれ、

全死亡:2.66 (1.76–4.03)

がん死:2.54 (1.25–5.15)

心血管死:2.74 (1.29–5.81)

となり、「全死亡」、「がん死」「心血管死」において有意なリスク増加の関連が示された。

「年齢、性別、勤務先、BMI、喫煙、高血圧、脂質異常症」で調整した糖尿病(WHO/IEC基準)のハザード比[HR(95%CI)]は、正常血糖と比較して、それぞれ、

全死亡:2.25 (1.55–3.27)

がん死:1.75 (0.93–3.28)

心血管死:2.68 (1.38–5.20)

となり、ADA基準の場合と同様に、「全死亡」、「がん死」、「心血管死」において有意なリスク増加の関連が示された。

Diabetes Care. 2021 Mar;44(3):757-764.

結論:

日本人労働者集団において、米国糖尿病学会(ADA)と世界保健機関(WHO)/国際専門委員会(IEC)で定義された前糖尿病(糖尿病予備軍)は、正常血糖と比較して、全ての原因による死亡、がん死の有意なリスク増加が示されたが、心血管死の有意なリスク増加は示されなかった。

ゆえに、糖尿病のみならず、前糖尿病の予防と管理の重要性が示された。

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