2型糖尿病患者の肝酵素に対するSGLT2阻害薬の影響



PubMed URL:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/30066148/ 

タイトル:Empagliflozin is associated with improvements in liver enzymes potentially consistent with reductions in liver fat: results from randomised trials including the EMPA-REG OUTCOME® trial

<概要(意訳)>

背景:

SGLT2阻害薬は、血糖低下作用と心血管死に対する有益な効果に加えて、肥満指数を改善する。

本研究では、2型糖尿病患者のアミノトランスフェラーゼ(脂肪肝と関連するALT、AST)に対するSGLT2阻害薬の効果を調査した。

方法:

ベースラインからのALT(アラニンアミノトランスフェラーゼ)、AST(アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ)の変化を下記の試験別に調査した。

・EMPA-REGOUTCOME®試験(n=7,020、評価期間:28週、164週時点)

・4つのプラセボ対照試験(n=2,477、評価期間:24週時点)

・SGLT2阻害薬(エンパグリフロジン)vs グリメピリドの試験(n=1,545、評価期間:28週、104週時点)

また、ASTとALTのベースラインからの平均差(U/I)は、全ての試験参加者のデータを使用し、ベースラインの3分位数のTertile3(highest tertile)と全体での分析を実施した。

結果:

EMPA-REGOUTCOME®試験:「28週時の全体」におけるALTとASTの平均差(U/I)

ALT:−2.22 (−2.83, −1.62)、p<0.0001

AST:−1.01 (−1.48, −0.54)、p<0.0001

EMPA-REGOUTCOME®試験:「28週時のTertile3」におけるALTとASTの平均差(U/I)

ALT:−4.36 (−5.51, −3.21)、p<0.0001

AST:−1.53 (−2.35, −0.72)、p=0.0002

EMPA-REGOUTCOME®試験:「164週時の全体」におけるALTとASTの平均差(U/I)

AST:−1.26 (−2.12, −0.40)、p=0.0040

ALT:−0.66 (−1.45, 0.13)、p=0.1007

EMPA-REGOUTCOME®試験:「164週時のTertile3」におけるALTとASTの平均差(U/I)

AST:−2.22 (−3.78, −0.66)、p=0.0053

ALT:−0.99 (−2.34, 0.36)、p=0.1504

4つのプラセボ対照試験:「24週時の全体」におけるALTとASTの平均差(U/I)

ALT:−3.15 (−4.11, −2.18)、p<0.0001

AST:−1.45 (−2.12, −0.78)、p<0.0001

4つのプラセボ対照試験:「24週時のTertile3」におけるALTとASTの平均差(U/I)

ALT:−5.60 (−7.41, −3.79)、p<0.0001 

AST:−2.84 (−4.14, −1.54)、p<0.0001

SGLT2阻害薬 vs グリメピリドの試験:「28週時の全体」におけるALTとASTの平均差(U/I)

ALT:−4.88 (−6.68, −3.09)、p<0.0001

AST:−2.78 (−3.92, −1.64)、p<0.0001

SGLT2阻害薬 vs グリメピリドの試験:「28週時のTertile3」におけるALTとASTの平均差(U/I)

ALT:−7.14 (−10.11, −4.18)、p<0.0001

AST:−3.92 (−5.79, −2.04)、p<0.0001

SGLT2阻害薬 vs グリメピリドの試験:「104週時の全体」におけるALTとASTの平均差(U/I)

ALT:−4.28 (−6.11, −2.45)、p<0.0001

AST:−3.00 (−4.33, −1.67)、p<0.0001

SGLT2阻害薬 vs グリメピリドの試験:「104週時のTertile3」におけるALTとASTの平均差(U/I)

ALT:−6.03 (−9.02, −3.04)、p<0.0001

AST:−5.25 (−7.47, −3.03)、p < 0.0001

全ての試験において、SGLT2阻害薬群でASTとALTは減少を示したが、減少した平均差の関係は、ALT>ASTであった。

Diabetologia(2018)61: 2155-2163

EMPA-REGOUTCOME®試験の28週、52週、164週におけるALTとAST値の低下は、「体重、HbA1c、体重とHbA1c」の変化とは独立した関係であることが示された。

Diabetologia(2018)61: 2155-2163

結論:

これらの非常に一貫した結果は、SGLT2阻害薬がアミノトランスフェラーゼ(ALT、AST)値が高い2型糖尿病患者の脂肪肝[参考:AST/ALT<2は肝疾患疑い、AST/ALT<0.87(ALT>AST)は過栄養性の脂肪肝]を減少させることが示唆された。

 

【参考情報】

AST、ALT|「肝臓の病態」を読む検査

https://www.kango-roo.com/learning/3483/

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