心大血管疾患リハビリテーション料(令和4年度改定)のポイント



☆心大血管疾患リハビリテーションとは

心大血管疾患の患者(入院・外来)に対し、心機能の回復および安全な社会復帰と再発予防を目指すリハビリテーションを指す。

対象患者は、医師が個別に心大血管疾患リハビリテーションが必要と認めた以下の患者。

対象患者

詳細

1. 急性発症した心大血管疾患

急性心筋梗塞、狭心症、大血管疾患(大動脈解離、解離性大動脈瘤)

2.心大血管疾患の手術後 

開心術後、経カテーテル大動脈弁置換術後、大血管術後

3. 慢性の心大血管疾患により、一程度以上、呼吸循環機能および日常生活能力が低下した患者

①慢性心不全で、左室駆出率40%以下、最高酸素摂取量が基準値80%以下、BNP(脳性Na利尿ペプチド)が80pg/mL以上、またはNT-proBNP(脳性Na利尿ペプチド前駆体N端フラグメント)が 400pg/mL以上の状態の患者

②末梢動脈閉塞性疾患で、間欠性跛行を呈する状態の患者

☆提供する職種と内容

心大血管疾患リハビリテーション専任医師の指導管理のもとで医師・理学療法士(PT:Physical therapist)・作業療法士(OT:Occupational therapist)・看護師が症例に応じて、運動指導、運動負荷試験、運動療法(筋力トレーニング、持久力トレーニング等)を組み合わせて提供する。

標準的な実施時間は以下の通り。

患者種別

実施時間/回

実施時間・頻度

入院患者

60分(3単位)程度

5~7日程度

外来患者

60分(3単位)以上

180分(9単位)

☆2種類の心大血管疾患リハビリテーション料

自院が届け出たリハビリテーション料の点数を、標準的算定日数を限度として算定する。

リハビリテーション料

点数(1単位)

算定上限日数

心大血管疾患リハビリテーション料(Ⅰ)

205点

起算日(開始日)

から150日

心大血管疾患リハビリテーション料(Ⅱ)

125点

☆心大血管疾患リハビリテーション料の施設基準

 

心大血管疾患リハビリテーション料(Ⅰ)

心大血管疾患リハビリテーション料(Ⅱ)

施設

・循環器内科または心臓血管外科を標榜する医療機関

 

・自院または連携医療機関(循環器内科または心臓血管外科を標榜する医療機関に限る)において、緊急手術や緊急血管造影検査が行える体制が確保されている

・自院または連携医療機関が、救命救急入院料または特定集中治療室管理料を届出ており、その治療室はリハ中に生じた患者の緊急事態に使用できる

医師

・専任の常勤医師(日本心臓リハビリテーション学会が認定する心臓リハビリテーション指導士の 研修を修了するなど、心リハの経験を有する医 師):1名以上専任の非常勤医師(心リハ経験を有する医師)の常勤換算可

・心リハ実施時間帯に、循環器内科または心臓血管外科の医師が常時勤務

・心リハ実施時間帯において、以下のいずれも満たす循環器内科または心臓血管外科担当する医師(非常勤含む):1名以上

・心リハの経験を有する医師(非常勤含む):1名以上

1名の医師が両方の要件を満たす場合は、その医師1名でよい

医師以外の従事者

専従の常勤PT(理学療法士)または心リハ経験を有する看護師:計2名以上(内1名は専任でも可)

専従のPT(理学療法士)または

心リハ経験を有する看護師:計1名以上

訓練室

専用の機能訓練室(病院:内法 30m以上、診療所:内法 20m以上、患者1人につきおおむね3m以上)

訓練に必要な器機・器具

訓練室内:酸素供給装置、除細動器、心電図モニター、トレッドミルまたはエルゴメーター、血圧計、救急カート

施設内:運動負荷試験装置

その他要件

・リハに関する記録(医師の指示、運動処方、実施時間、訓練内容、担当者など)を患者ごとに一元的に保管し、医療従事者が常に閲覧可能

・定期的に多職種が参加するカンファレンスを開催

<算定時の必須事項>

・医師の直接監視下、または医師が同一建物内にいて直接監視している従事者と常時連絡がとれ、緊急事態にすぐ対応できる体制であること。

・専任医師は、定期的な心機能のチェックとリハビリテーション実施計画の作成を行い、カルテに記載すること。

・患者1人あたり約3m2以上の面積を確保すること。

<算定にかかるルール>

・標準的算定日数を超えた場合、必要があれば算定できる(外来患者に標準的算定日数を超えて実施する場合、介護保険のリハビリテーションの適用について評価・支援を行う)が、月13単位までである。

 例えば、月の途中で標準的算定日数を超えた場合は、超えた日以降の算定上限が13単位となる。

 しかしながら、「慢性閉塞性肺疾患(COPD)、心筋梗塞の患者、狭心症の患者、回復期リハ病棟入院料を算定する患者、回復期リハ病棟入院料を算定した患者で、同病棟を退棟した日から3月以内の患者(医療機関に入院中の患者、介護老人保健施設または介護医療院に入所中の患者を除く)」等の患者は、標準的算定日数の適応外となる。

・1回の訓練で従事者1名が担当できる患者数は以下の通り。

職種

入院患者

外来患者

医師

15人程度

20人程度

理学療法士、作業療法士、看護師

5人程度

8人程度

・以下の検査費用は、心大血管疾患リハビリテーション料に含まれるため、同日に算定はできない。

 D208 心電図検査、D209 負荷心電図検査、D220 呼吸心拍監視、新生児心拍、カルジオスコープ(ハートスコープ)、カルジオタコススコープ

☆心大血管疾患リハビリテーション料における3種類の加算

心大血管疾患リハビリテーション料には、3種類の加算(初期加算、早期リハビリテーション加算、新設されたリハビリテーションデータ提出加算)がある。

入院中の患者に[訓練室以外の病棟(ベッドサイド含む)で実施した場合も含む]早期からリハビリテーションを実施した場合に算定できる。

それぞれの要件を満たせば、同日に算定できる。

加算名

点数(1単位)

算定可能期間

初期加算

45点

起算日から14日まで

早期リハビリテーション加算

30点

起算日から30日まで

起算日は、「発症日、手術日または急性増悪から7日目、または心大血管疾患リハビリテーション開始日のいずれか早い日」である。

<初期加算の施設基準(届出が必要)>

従事者

・リハビリテーション科の常勤医師1名以上

・専任医師・専従者における非常勤職員の常勤換算も可能

週3日以上、週22時間以上、勤務する専任の非常勤医師または専従の非常勤職員を2名以上組み合わせることにより、常勤医師を配置した場合と同じ勤務時間帯に配置ができる場合、その非常勤医師の実労働時間を常勤換算して専任(他の業務との兼任が可能)の常勤医師数に算入できる(医師の用件は、各施設基準に準じる)。

専従の非常勤職員も同様である(職種、要件、算入上限人数は各施設基準に準じる)。

その他事項

原則、リハビリテーション科を標榜していること。

ただし、リハビリテーションに専ら従事する常勤医師が勤務している、

または心大血管疾患リハビリテーションの経験を有する常勤医師が勤務する循環器科もしくは心臓血管外科を

標榜している医療機関であれば、算定可能である。

<リハビリテーションデータ提出加算(新設)>

データに基づく適切な評価を推進するため、外来患者の疾患別リハビリテーションに関わるデータを厚生労働省に提出した場合、算定できる。

対象患者:心大血管疾患リハビリテーション料を算定する外来通院中の患者

算定用件:診療報酬の請求状況、診療の内容に関するデータを継続して厚生労働省に提出していること(データは3月単位で作成)

加算

点数

リハビリテーションデータ提出加算

50点(月1回に限る)

<リハビリテーションデータ提出加算の施設基準(届出が必要)>

リハビリテーションを実施している患者にかかる診療内容に関するデータを継続的かつ適切に提出するために必要な体制が整備されていること。

データの

作成・体制

(1)   外来医療等調査に適切に参加できる体制を有すること(連絡担当者を1名指定必須)

(2)   外来医療等調査に準拠したデータを提出すること

(3)   診療記録(過去5年間のカルテおよび過去3年間の手帳記録、看護記録など)の全てが

            保管・管理されていること

(4)   診療記録の保管・管理については、厚生労働省「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」に

             準拠した体制が望ましい

(5)   診療記録の保管・管理のための規定が明文化されていること

(6)   疾病統計には、ICD大分類程度以上の疾病分類がされていること

(7)   保管・管理された診療記録が疾病別に検索・抽出できること

その他事項

(1)   令和5年5月20日、8月22日、11月21日または令和6年2月20日までに別添2の様式7の10を

             地方厚生(支)局医療科長経由で、厚生労働省保険局医療課長へ届け出ること

(2)   試行データを厚生労働省のチェックプログラムにより作成し、調査実施説明資料に従って期日(別途通知)               までに外来医療等調査事務局へ提出すること

(3)   試行データが適切に提出されていた場合は、「データ提出の実績が認められた保険医療機関」として

            厚生労働省から事務連絡が発出される。

            この連絡以後、リハビリテーションデータ提出加算の届出が可能となる

管理人作成

【参考情報】

心大血管疾患血管リハビリテーション料

https://www.pt-ot-st.net/contents4/medical-treatment-reiwa-4/department/543 

https://www.pt-ot-st.net/contents2/medical_treatment26/242 

https://www.pt-ot-st.net/contents4/medical-treatment-reiwa-4/department/103 

令和4年度診療報酬改定の概要 【全体概要版】

https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/000906904.pdf

令和4年度診療報酬改定の概要 個別改定事項Ⅲ

https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/000911811.pdf

令和4年度診療報酬改定の概要 入院Ⅱ(回復期・慢性期入院医療)

https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/000911811.pdf

令和4年度診療報酬改定の概要

https://www.wam.go.jp/content/files/pcpub/top/mseminar/msem22001_01.pdf 

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