HFrEF患者の予後予測におけるNT-proBNPとSGLT2阻害薬の効果



PubMed URL:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34556318/ 

タイトル:Prognostic Importance of NT-proBNP and Effect of Empagliflozin in the EMPEROR-Reduced Trial

<概要(意訳)>

背景:

駆出率が低下した心不全(HFrEF)患者におけるSGLT2阻害薬のベネフィットとNT-proBNP(N末端プロB型ナトリウム利尿ペプチド)との関係は報告されていない。

本研究では、EMPEROR-Reduced試験におけるエンパグリフロジンの効果とNT-proBNPとの関係を評価した。

方法:

HFrEF患者は、プラセボまたはエンパグリフロジン10mg/日に無作為に割り付けられた。

NT-proBNPは、「ベースライン、4週目、12週目、52週目、100週目」で測定された。

被験者は、ベースラインのNT-proBNP(pg/mL)の四分位数[<1,115、1,115-1,909、1,910-3,479、≧3,480]により、分類された。

結果:

ベースラインのNT-proBNP値は、3,728例の被験者で利用可能であった。

ベースラインにおけるNT-proBNP値の中央値は、1,910 pg/mL(IQR: 1,115-3,480 pg/mL)であった。

このNT-proBNP値が高い患者は、「年齢が高い、心房細動または心房粗動の既往歴が高い、12ヶ月以内の心不全による入院率が高い、NYHA分類Ⅲ~Ⅳ度の割合が高い、心拍数が高い、QOLが低い、BMIが低い、ARNI使用率が低い、利尿薬使用率が高い、eGFRが低い(全てのp<0.001)」といった特徴があった。

「初発の心血管死または心不全による入院」における、プラセボと比較したSGLT2阻害薬のハザード比[HR(95%CI)]は、それぞれ、

全体:0.75 (0.65-0.86)、[補足]絶対リスク差=5.3%、NNT=19

<1,115 pg/m:0.97 (0.66-1.42)

1,115-1,909 pg/m:0.62 (0.45-0.87)

1,910-3,479 pg/m:0.67 (0.51-0.89)

≥3,480 pg/m:0.80 (0.65-0.98

となり、SGLT2阻害薬による治療は、ベースラインのNT-proBNP値に関わらず、全体の結果と一貫した効果が示された(交互p=0.94)。

「初発の心血管死」における、プラセボと比較したSGLT2阻害薬のハザード比は、それぞれ、

全体:0.92 (0.75-1.12) 、[補足]絶対リスク差=0.8%、NNT=125

<1,115 pg/m:1.44 (0.84-2.47)

1,115-1,909 pg/m:0.89 (0.56-1.43)

1,910-3,479 pg/m:0.75 (0.49-1.16)

≥3,480 pg/m:0.89 (0.66-1.19)

となり、SGLT2阻害薬による治療は、ベースラインのNT-proBNP値に関わらず、全体の結果と一貫した効果が示された(交互p=0.18)。

「初発の心不全による入院」における、プラセボと比較したSGLT2阻害薬のハザード比は、それぞれ、

全体:0.69 (0.59-0.81) 、[補足]絶対リスク差=5.1%、NNT=20

<1,115 pg/m:0.64 (0.38-1.07)

1,115-1,909 pg/m:0.54 (0.36-0.79)

1,910-3,479 pg/m:0.69 (0.50-0.96)

≥3,480 pg/m:0.78 (0.62-1.00)

となり、SGLT2阻害薬による治療は、ベースラインのNT-proBNP値に関わらず、全体の結果と一貫した効果が示された(交互p=0.14)。

「初発の腎複合アウトカム」における、プラセボと比較したSGLT2阻害薬のハザード比[HR(95%CI)]は、それぞれ、

全体:0.50 (0.32-0.77) 、[補足]絶対リスク差=1.5%、NNT=67

<1,115 pg/m:0.34 (0.11-1.06)

1,115-1,909 pg/m:0.63 (0.26-1.54)

1,910-3,479 pg/m:0.44 (0.16-1.23)

≥3,480 pg/m:0.52 (0.26-1.03)

となり、SGLT2阻害薬による治療は、ベースラインのNT-proBNP値に関わらず、全体の結果と一貫した効果が示された(交互p=0.71)。

「eGFR(mL/min/1.73 m/年)の平均低下差」は、ベースラインのNT-proBNP値別で、それぞれ、

<1,115 pg/m:1.07 (–0.16 to 2.30)

1,115-1,909 pg/m:1.89 (0.67 to 3.1)

1,910-3,479 pg/m:1.92 (0.67 to 3.1)

≥3,480 pg/m:2.15 (0.79 to 3.5)

となり、SGLT2阻害薬による治療は、ベースラインのNT-proBNP値に関わらず、eGFRの低下を抑制していることが示された(交互p=0.27)。

J Am Coll Cardiol. 2021 Sep 28;78(13):1321-1332.

また、無作為割り付け後、「4週目、12週目、52週目、100週目」で測定したNT-proBNPの平均差は、それぞれ、

4週目:5% (1% to 8%)、p=0.009

12週目:6% (2% to 10%)、p=0.006

52週目:13% (7% to 18%)、p<0.001

100週目:7% (–3% to 16%)、p=0.17

となり、プラセボと比較してSGLT2阻害薬は、52週にかけてNT-proBNP濃度を有意に低下(最大の差)させた。

つぎに、無作為化後12週までに主要評価項目のイベントを発症しなかった被験者(3,730例の87%)を対象とし、ベースラインから12週目までに変化したNT-proBNPと「心血管死または心不全による入院」のリスクを評価した。

ベースラインから12週目までに変化したNT-proBNPは、「低」を(四分位1:<1,115 pg/mL)、「高」を(四分位2〜4:≥1,115pg/mL)として、「低/低」、「高/低」、「低/高」、「高/高」の4つのグループに分類した。

「高/高」グループを参照とした「心血管死または心不全による入院」のハザード比は、そそれぞれ、

「低/低」:0.35 (0.26-0.46)、p<0.001

「高/低」:0.23 (0.15-0.35)、p<0.001

「低/高」:0.61 (0.41-0.91)、p=0.01

となり、(プラセボとSGLT2阻害薬の2群全体で)ベースラインから12週目までにNT-proBNPが「低/低」、「高/低」、「低/高」に変化したグループの「心血管死または心不全による入院」リスクは有意に低いことが示された。

J Am Coll Cardiol. 2021 Sep 28;78(13):1321-1332.

結論:

EMPEROR-Reduced試験では、SGLT2阻害薬(エンパグリフロジン)の治療は、ベースラインのNT-proBNPレベルに関わらず、HFrEF患者の心血管および腎エンドポイントのリスクを低下させることが示された。

SGLT2阻害薬による治療は、NT-proBNPを低下させるだけでなく、無作為化12週目までのNT-proBNPの推移は、ベースラインのNT-proBNPよりも予後を予測することを示した。

J Am Coll Cardiol. 2021 Sep 28;78(13):1321-1332.

【参考情報】

NT-proBNPの測定値と慢性心不全の診断指標

http://www.kensin-kensa.com/archives/cat13/ntprobnp/ 

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