1型・2型糖尿病患者におけるCOVID-19関連死の危険因子



PubMed URL:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32798471/

タイトル:Risk factors for COVID-19-related mortality in people with type 1 and type 2 diabetes in England: a population-based cohort study

<概要(意訳)>

背景:

糖尿病は、COVID-19関連死の増加と関連しているが、高血糖や肥満などの是正可能な危険因子と、糖尿病患者におけるCOVID-19関連の死亡リスクは不明である。

本研究では、1型および2型糖尿病患者の危険因子とCOVID-19関連の死亡リスクを評価した。

方法:

イギリスで糖尿病と診断された人々を対象としたコホート研究を行った。

対象となった1型および2型糖尿病患者のデータは、国家統計局により照合された死亡記録(2017年1月2日~2020年5月11日)にリンクされている。

2020年の1月5日迄の週から19週間における1型および2型糖尿病患者の週別の死亡数を特定し、2017年、2018年、2019年の対応する週の平均死亡数からの変化率を計算した。

リスク要因[性別、年齢、民族、重複剥奪指標、HbA1c、腎障害、BMI、喫煙状況、心血管合併症]とCOVID-19関連の死亡(期間:2月16日~5月11日)リスクを、Cox比例ハザードモデルを使用して調査した。

結果:

2020年の1月5日迄の週から19週間における毎週の死亡登録数は、2017〜2019年の対応する3年間の週平均を1型糖尿病患者では672人(50.9%)、2型糖尿病患者では16,071人(64.3%)増加していた。

Lancet Diabetes Endocrinol. 2020 Oct; 8(10): 823-833.

2020年2月16日~5月11日の間に、1型糖尿病患者264,390人の内1,604人、2型糖尿病患者2,874,020人の内36,291人が「全ての原因による死亡(全死亡)」となっていた。

これら全死亡の内、1型糖尿病患者464人と2型糖尿病患者10,525人は、COVID-19関連死であり、1型糖尿病患者289人(62.3%)と2型糖尿病患者5,833人(55.4%)は、「心血管疾患の既往歴、または腎障害(eGFR<60mL/min/1.73m2)」を有していた。

Lancet Diabetes Endocrinol. 2020 Oct; 8(10): 823-833.

「男性、高齢(70歳以上)、腎障害(eGFR<60)、重複剥奪指標1~3(貧困度が高い)、脳卒中の既往、心不全の既往」は、1型および2型糖尿病患者ともに、COVID-19関連の死亡リスクの増加と関連していた。

HbA1cとCOVID-19関連の死亡リスクとの関連は、

1型糖尿病患者の場合、HbA1c 48-53 mmol/mol(6.5-7.0%)と比較して、それぞれ、

HbA1c <48 mmol/mol(6.5%未満): [HR 1.37(95%CI 0.89-2.09)、p=0.15]

HbA1c 54-58 mmol/mol(7.1-7.5%未満): [HR 0.78(95%CI 0.48-1.25)、p=0.30]

HbA1c 59-74 mmol/mol(7.6-8.9%未満): [HR 1.16(95%CI 0.81-1.67)、p=0.42]

HbA1c 75-85 mmol/mol(9.0-9.9%未満): [HR 1.37(95%CI 0.90-2.07)、p=0.14]

HbA1c 86 mmol/mol(10%以上): [HR 2.23(95%CI 1.50-3.30)、p<0.0001] となった。

HbA1cとCOVID-19関連の死亡リスクとの関連は、

2型糖尿病患者の場合、HbA1c 48-53 mmol/mol(6.5-7.0%)と比較して、それぞれ、

HbA1c <48 mmol/mol(6.5%未満): [HR 1.11(95%CI 1.05-1.18)、p=0.0005]

HbA1c 54-58 mmol/mol(7.1-7.5%未満): [HR 1.05(95%CI 0.97-1.13)、p=0.23]

HbA1c 59-74 mmol/mol(7.6-8.9%未満): [HR 1.22(95%CI 1.15-1.30)、p<0.0001]

HbA1c 75-85 mmol/mol(9.0-9.9%未満): [HR 1.36(95%CI 1.24-1.50)、p<0.0001]

HbA1c 86 mmol/mol(10%以上): [HR 1.61(95%CI 1.47-1.77)、p<0.0001] となった。

BMIとCOVID-19関連の死亡リスクとの関連は、「U字型」が認められた。

1型糖尿病患者の場合、BMI 25.0-29.9と比較して、それぞれ、

BMI<20.0: [HR 2.45(95%CI 1.60-3.75)、p<0.0001]

BMI 20.0-24.9: [HR 1.51(95%CI 1.15-1.98)、p=0.0027]

BMI 30.0-34.9: [HR 1.47(95%CI 1.12-1.94)、p=0.0059]

BMI 35.0-39.9: [HR 1.72(95%CI 1.21-2.46)、p=0.0028]

BMI≧40.0: [HR 2.33(95%CI 1.53-3.56)、p<0.0001] となった。

BMIとCOVID-19関連の死亡リスクとの関連は、「U字型」が認められた。

2型糖尿病患者の場合、BMI 25.0-29.9と比較して、それぞれ、

BMI<20.0: [HR 2.33(95%CI 2.11-2.56)、p<0.0001]

BMI 20.0-24.9: [HR 1.34(95%CI 1.27-1.42)、p<0.0001]

BMI 30.0-34.9: [HR 1.04(95%CI 0.98-1.10)、p=0.23]

BMI 35.0-39.9: [HR 1.17(95%CI 1.08-1.26)、p<0.0001]

BMI≧40.0: [HR 1.60(95%CI 1.47-1.75)、p<0.0001] となった。

Lancet Diabetes Endocrinol. 2020 Oct; 8(10): 823-833.

結論:

イギリスでのCOVID-19パンデミックの間に、1型および2型糖尿病患者の死亡数は急激に増加した。

1型および2型糖尿病患者におけるCOVID-19関連の死亡リスクの増加は、心血管疾患の既往や腎障害のみならず、血糖コントロールとBMIも独立した死亡リスクの増加と関連していた。

 

【参考情報】

重複剥奪指標 (Index of Multiple Deprivation)

https://www.bbc.com/japanese/52518562 

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