DPP-4阻害薬と比較したSGLT2阻害薬の新規治療における心血管イベント・死亡リスク



PubMed URL:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32559476/

タイトル:Risk of cardiovascular events and death associated with initiation of SGLT2 inhibitors compared with DPP-4 inhibitors: an analysis from the CVD-REAL 2 multinational cohort study

<概要(意訳)>

背景:

2型糖尿病患者を対象とした心血管アウトカム試験において、SGLT2阻害薬は心血管へのベネフィットを示したが、DPP-4阻害薬は示していない。

本研究では、実臨床化におけるDPP-4阻害薬と比較したSGLT2阻害薬の心血管への影響と心血管疾患の既往の有無別(1次/2次予防)における影響を調査した。

方法:

この比較コホート研究では、アジア太平洋、中東、ヨーロッパ、北米の地域における13か国の実臨床データを使用して、2型糖尿病の成人患者にDPP-4阻害薬の新規治療を開始する群とSGLT2阻害薬の新規治療をする群の心血管イベントと死亡リスクを評価した。

匿名化された医療記録から、2012年12月1日~2016年5月1日の間に、2型糖尿病の治療でDPP-4阻害薬、またはSGLT2阻害薬を新規開始した患者を抽出し、2014年12月31日~2017年11月30日までフォローアップした。

主要評価項目は、「心不全による入院、全ての原因による死亡、心筋梗塞、脳卒中」とした。

結果:

医療記録から抽出した2,413,198人の2型糖尿病患者の内、SGLT2阻害薬の新規治療を開始したのは230,721人(9.6%)、DPP-4阻害薬の新規治療を開始したのは2,182,477人(90.4%)であった。

傾向スコアマッチング法により、SGLT2阻害薬とDPP-4阻害薬の新規治療群は、193,124人ずつの1:1にマッチングされた。

全体の平均年齢は58歳であり、44.1%は女性であり、30.1%は、心血管疾患の既往(2次予防患者)があった。

また、スタチンは62.4%、ACE阻害剤は23.6%、ARBは38.2%、メトホルミンは78.7%に処方されていた。

DPP-4阻害薬と比較した、SGLT2阻害薬の新規治療による「心不全による入院」リスクは、

[HR 0.69(95% CI:0.61-0.77)、p<0.0001]と大幅な低下が認められた。

Lancet Diabetes Endocrinol.2020 Jul;8(7):606-615.

DPP-4阻害薬と比較した、SGLT2阻害薬の新規治療による「全ての原因による死亡」リスクは、[HR 0.59(95% CI:0.52-0.67)、p<0.0001]と大幅な低下が認められた。

Lancet Diabetes Endocrinol.2020 Jul;8(7):606-615.

DPP-4阻害薬と比較した、SGLT2阻害薬の新規治療による「心不全の入院、あるいは全ての原因による死亡の複合」リスクは、[HR 0.64(95% CI:0.57-0.72)、p<0.0001]と大幅な低下が認められた。 

Lancet Diabetes Endocrinol.2020 Jul;8(7):606-615.

DPP-4阻害薬と比較した、SGLT2阻害薬の新規治療による「心筋梗塞」リスクは、[HR 0.88(95% CI:0.80-0.98)、p=0.020]と中等度の有意な低下が認められた。

Lancet Diabetes Endocrinol.2020 Jul;8(7):606-615.

DPP-4阻害薬と比較した、SGLT2阻害薬の新規治療による「脳卒中」リスクは、[HR 0.85(95% CI:0.77-0.93)、p=0.0004]と中等度の有意な低下が認められた。

Lancet Diabetes Endocrinol.2020 Jul;8(7):606-615.

ベースラインで心血管疾患の既往がある(2次予防)患者と既往がない(1次予防)患者の臨床転帰をサブ解析した。

DPP-4阻害薬と比較した、SGLT2阻害薬の新規治療による「心不全による入院」リスクは、

2次予防で、[HR 0.72(95% CI:0.64-0.80)]

1次予防で、[HR 0.66(95% CI:0.53-0.82)]

となり、心血管疾患の既往に関わらず、一貫して有意な低下が認められた(交互p=0.54)。

DPP-4阻害薬と比較した、SGLT2阻害薬の新規治療による「全ての原因による死亡」リスクは、

2次予防で、[HR 0.64(95% CI:0.58-0.71)]

1次予防で、[HR 0.68(95% CI:0.57-0.80)]

となり、心血管疾患の既往に関わらず、一貫して有意な低下が認められた(交互p=0.60)。

DPP-4阻害薬と比較した、SGLT2阻害薬の新規治療による「心不全の入院、あるいは全ての原因による死亡の複合」リスクは、

2次予防で、[HR 0.69(95% CI:0.62-0.76)]

1次予防で、[HR 0.69(95% CI:0.59-0.80)]

となり、心血管疾患の既往に関わらず、一貫して有意な低下が認められた(交互p=0.97)。

DPP-4阻害薬と比較した、SGLT2阻害薬の新規治療による「心筋梗塞」リスクは、

2次予防で、[HR 0.85(95% CI:0.68-1.07)]

1次予防で、[HR 0.76(95% CI:0.62-0.92)]

となり、1次予防で有意な低下が認められたが、2次予防との交互作用はなかった(p=0.44)。

DPP-4阻害薬と比較した、SGLT2阻害薬の新規治療による「脳卒中」リスクは、

2次予防で、[HR 0.87(95% CI:0.72-1.04)]

1次予防で、[HR 0.76(95% CI:0.65-0.90)]

となり、1次予防で有意な低下が認められたが、2次予防との交互作用はなかった(p=0.30)。

Lancet Diabetes Endocrinol.2020 Jul;8(7):606-615.

結論:

DPP-4阻害薬と比較して、SGLT2阻害薬で2型糖尿病の新規治療を開始する方が、心不全による入院と全死亡リスクが大幅に低下し、地域間でも一貫した結果が認められた。

また、SGLT2阻害薬の新規治療は、心筋梗塞と脳卒中のリスクを中程度に低下させた。

本研究は、過去の大規模臨床試験と観察研究で示された結果に新たな知見を追加し、2型糖尿病患者に対するSGLT2阻害薬の心血管のベネフィットを更に支持した。

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